食にまつわる場面として、映画でも小説でも印象的に登場するのが「朝食」のシーン。
今回はこれまで作ってきた再現料理の中から、朝食にスポットを当ててご紹介。日本のアニメ作品にハリウッドやフランス映画と、それぞれに特徴のある朝食が登場します。あなたの気になる朝食はどれ?
映画に登場する印象的な朝食たち
ヒューゴの不思議な発明 |モンパルナス駅のプチ・デジュネ
はじめにご紹介するのは大変フランスらしい朝食、「プチ・デジュネ」。
映画『ヒューゴの不思議な発明』の舞台、モンパルナス駅のカフェでも出されているフランス式の朝食は苦味の効いたエスプレッソとパン・オ・ショコラなど、甘ーいペストリーと一緒にいただくのが定番のスタイルです。
再現料理ブログでも、バターとジャムをたっぷり塗ったバゲットのオープンサンド「タルティーヌ」と、直火式のポットで淹れたエスプレッソとの組み合わせをご紹介しておりましたね。
それ単体では甘すぎるタルティーヌも苦味の強いコーヒーと一緒だと非常にバランスが良く、甘すぎて完食できないどころか食べすぎてしまいそう。ちょっぴり危険だなあと思ったのを覚えています。
なお劇中のモンパルナス駅のモデルの一つ、リヨン駅にあるカフェ「Le Train Blue(ル・トラン・ブルー)」では、劇中のような古き良きパリの雰囲気の中でお食事をいただくことができたりします。
歴史的建造物にも指定されたこちらの内装は、ベル・エポックの時代を感じさせる煌びやかなフレスコ画や金の彫刻に彩られ大変豪華。
本作だけでなく数々の映画のロケ地として登場しているため、パリを訪れた際にはこちらのカフェでお気に入りのシーンをひとつひとつ思い出しながら朝食をいただくというのも良さそうですよね。
ヒューゴの不思議な発明 |モンパルナス駅のプチ・デジュネ
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シャーロック・ホームズシリーズ|海軍条約文書事件の解決を祝う朝食
シャーロック・ホームズシリーズの短編『海軍条約文書事件』のラストシーンでは、なんと朝食にカレーが登場。
事件解決のために特別に用意された朝食……という訳ではなく、ホームズが活躍したヴィクトリア朝時代のイギリスでは当時、カレー粉が発売されて大流行していたからだそうで。
前日の残り物を美味しくアレンジできて重宝されたため、朝食にカレーが出るのは珍しいことでもなかった訳なんですね。
そんなヴィクトリア朝時代の大人気フードのカレーは、鶏肉に玉ねぎ、そしてりんごが入っているのが特徴的。
りんごの甘さや爽やかさが加わったカレーは、スパイシーながら穏やか・まろやかな味わいで朝食にもぴったり。常に頭をフル回転させている名探偵の体も優しく労ってくれそうです。
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シャーロック・ホームズシリーズ|海軍条約文書事件の解決を祝う朝食
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名探偵コナン|喫茶ポアロのモーニング「ミートボールとキャベツのミルクトマト煮」
『名探偵コナン』に登場する喫茶店「喫茶ポアロ」のモーニングメニューは、探偵助手兼ポアロのアルバイト店員・黒ずくめの組織の構成員・公安警察の捜査官という3つ顔を持つ男、安室透さん考案のもの。
こちらは喫茶店らしい分厚いトーストにフレッシュなサラダと果物、それに濃いめのピンク色をしたスープが目を引く「ミートボールとキャベツのミルクトマト煮」も付いてくるという、モーニングの域を超えた豪華な内容でした。
ちなみに安室さんのミルクトマト煮はレトルトシチューとして販売されていたことがありましたが、SNSなどではその色合いに驚く人も多かった様子。
アニメに出てきたミルクトマト煮、そのままの色合いが忠実に再現されていたせいで驚きの見た目となっていましたが、お味はなかなかのもの。
大阪のスパイス会社・キャニオンスパイスさんが手がけているため、キャラクター商品とは思えないクオリティの高さを誇っています。
残念ながら安室さんのミルクトマト煮は手に入りにくいようですが、キャラクターイメージに合わせたレトルトカレーシリーズ
どれもスパイスのしっかり効いた本格派の味わいですので、気になる方はどうぞお試しあれ。
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名探偵コナン|喫茶ポアロのモーニング「ミートボールとキャベツのミルクトマト煮」
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ダウントン・アビー|英国貴族の朝食ケジャリー
20世紀初頭のイギリス貴族や使用人たちの人間模様を描いた『ダウントン・アビー』にたびたび登場するご飯料理が、こちらの「ケジャリー」です。
ダウントンの名料理長、パットモアさんの得意料理の一つであるケジャリーは、淡白なタラの身にほんのりとカレーが香るご飯を合わせた上品な味わいの一品。
ダウントン・アビー公式のクッキングレシピにも朝食メニューとして真っ先に登場していますし、ドラマを観た方ならお屋敷での朝食の代表格としてケジャリーを挙げる方も多いはず。
ドラマにはパットモアさんによる数々のお料理が登場していましたが、中でもケジャリーは登場頻度高めのメニューでした。
ほんのりスパイシーなケジャリーはしっとりと口当たりも良いため、濃く淹れたイングリッシュ・ブレックファストなど紅茶との相性も最高。
劇中ではアメリカの大富豪である伯爵夫人の弟・ハロルドが気に入って3回もお代わりした……というシーンがありましたが、ハロルド様じゃなくてもついつい夢中になって食べてしまいそうです。
なお、現在英国料理フェアを開催中のロイヤルホストでは、なんとケジャリーをイメージした特別メニューが食べられるとのこと。
イギリス料理を出すパブやレストランはあれど、ケジャリーを出すお店はそう多くないと思うので、気になる方は要チェック。この機会をお見逃しなく!
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ダウントン・アビー|英国貴族の朝食ケジャリー
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マトリックス|ネブカドネザル号の船内食風オートミール粥
お次はSF世界に登場する朝ごはん。
無機質な未来の世界に登場する食事についてはあまり美味しそうに描かれない傾向がありますが、中でも不味そうなSF飯の代表格として挙げられがちなのが、『マトリックス』に登場するお粥っぽい何か。
ネオを助けたモーフィアスたち、ネブカドネザル号の仲間も一緒に食べていたアレですね。
見た目といい、登場の仕方といい不味そうなイメージが先行してしまうものの、このお粥の材料は「人工アミノ酸にビタミン・ミネラルを加えた単細胞タンパク質」とのこと。
でも単細胞タンパク質って、ようは最近よく見かけるようになった代替肉(代替タンパク質)の仲間ですから、栄養たっぷりだし意外に味も悪くないのかもしれません。
単細胞タンパク質そのものはまだ日本で手に入れるのは難しいのですが、例えばこんな最先端技術を駆使したソイミートのフレーク
簡単に作れる上、栄養もあって美味しく、ディストピア飯気分まで味わえちゃう……! 4拍子揃った優秀メニューなので、意外にハマっちゃう人も多いかもですね。
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マトリックス|ネブカドネザル号の船内食風オートミール粥
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ミザリー|ウィルクス風スクランブルエッグのある朝食
サイコスリラーの傑作『ミザリー』に登場した朝食は、本作のヒロイン(?)アニー嬢による手作りのアメリカンブレックファスト。
ふんわりしたスクランブルエッグに焼いたスパムミート、ジャムをたっぷり塗ったトーストにアップルソースと、素朴な雰囲気を感じさせるメニューでした。
劇中では温かな家庭の雰囲気たっぷりな食卓と、どこでスイッチが入るかわからないアニーの狂気のコントラストがなんともサスペンスフルでしたが、ある意味超絶献身的な彼女の朝食プレートは、ボリュームたっぷりで味のバランスもなかなか。
古き良きアメリカの雰囲気も味わえるので、ゆっくり楽しむ休日のブランチなどにも悪くなさそうです。
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ミザリー|ウィルクス風スクランブルエッグのある朝食
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ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出|王女殿下といただくイングリッシュ・ブレックファスト
エリザベス女王の若き日のエピソードを基にした『ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出』に登場したのは、英国らしい極めてトラディショナルなスタイルのイングリッシュ・ブレックファスト。
一夜の自由を満喫しバッキンガム宮殿に戻った王女がジャック・ホッジ空軍兵を招いた朝食の席には、磨き上げられた銀のトーストラックにレモン水で満たされたクリスタルのグラス、凝った意匠のティーセットなどがずらりと並んでいました。
ティーカップと揃いのデザインの、美しい金縁のプレートに乗せられた朝食もシンプルながら大変豪華な印象。大きなソーセージにベイクドトマト、そして黄色が眩しいとろとろのスクランブルエッグが盛り付けられており、物資不足にあえぐ戦後の食卓とはとても思えない内容です。
ただその豪華さが許されているのは、王として国を支える重い責任があってこそのこと。
王女であるエリザベスと一兵卒であるジャック、それぞれの住む世界の違いも明確に示された、ちょっぴり切なくほろ苦い朝食シーンでした。
映画のストーリーはもちろんフィクションですが、昨年逝去されたエリザベス女王も自由に外出できたVEデー翌日の朝食は特別なものだったはず。
女王もお好きだったという甘みも苦味もしっかり効いた王室御用達のマーマレードをいただきながら、最高にチャーミングな彼女に想いを馳せるのもいいかもしれません。
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ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出|王女殿下といただくイングリッシュ・ブレックファスト
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黒執事|若き伯爵のためのポーチドサーモン
たまにはとびきり贅沢に、まるで執事にかしづかれる貴族のような朝の時間を過ごしたい……。
そんな夢をお持ちのお嬢様・お坊ちゃま方には、『黒執事』に登場する朝食のメニューがぴったり。
「あくまで執事」の執事・セバスチャンが用意するそれは、絶妙な火加減で仕上げたポーチドサーモンに清々しい香りのミントサラダ、そして美味しいスコーンの証「オオカミの口」がぱくっと開いた完璧なスコーンからなるパーフェクトな朝食。
完璧執事ではない私たちが用意するとちょっぴり時間はかかりますが、テーブルを美しく整え席に着けば気分は名門貴族。
上流階級御用達の紅茶舗・ハロッズの紅茶などと一緒にいただけば、とびきり優雅な気持ちで一日を過ごせること請け合いです。
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黒執事|若き伯爵のためのポーチドサーモン
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