今回再現するのは、テレビアニメも放送中の偽装家族ホームコメディ『SPY×FAMILY(スパイファミリー)』の原作第24話、アニメ版ではMISSION:16「ヨル's キッチン」に登場する料理。
ヨルさんがお母さんに作ってもらっていたという目玉焼きのせシチューは、パプリカに隠し味のサワークリームでまろやか。下ごしらえの具材も少なく、簡単に作れるのもポイントです。
特訓の末、ヨルさんがマスターした料理とは
目玉焼きのせ・パプリカ風味の「南部風」シチュー
今回再現するのは料理の苦手なヨルさんが、家族のために一念発起して作ったパプリカ風味のシチュー。
彼女が勤めている市役所の同僚・カミラさんの家に通い、毎日のように特訓してマスターした血と汗の結晶のようなシチューですね。
弟のユーリくんにも毒見役を手伝ってもらい、懐かしい母の味を思い出しながら作ったそれは、目玉焼きを乗せた素朴なもの。
見た目は決していいとは言えないけれどほっとする味で、アーニャちゃんとロイド氏にも好評だったよう。
シチューと同様に、とても優しくほっこりするエピソードでした。
材料・調理法の考察
ヨルさんが母の味を思い出しながら作ったシチューは南部風で目玉焼きが乗っており、パプリカパウダーやサワークリームが使われたものらしいとのこと。
原作やアニメの1話に登場する作中世界の地図は冷戦期の東西ドイツのそれと一致していますし、ヨルさんの出身地だという「ニールバーグ」もドイツ南部の「ニュルンベルク(Nurnberg・Nuremberg)」に少し寄せているのかなあと。
パプリカを使う中欧や東欧の煮込み料理といえば、ハンガリーのグヤーシュが起源とされる「Gulasch(グラーシュ・グーラッシュ)」がまず思い浮かぶところでしょうか。
南ドイツに接するお隣の国オーストリアには「フィアカー(辻馬車)グラーシュ」という、目玉焼きを乗せたグラーシュがあるので、元ネタはどうもこれっぽい。
フィアカーグラーシュには目玉焼きのほか、タコさんウィンナーのように切れ目を入れたソーセージもつきものです。ヨルさんのママが作ったシチューのお皿にもそれっぽいウィンナーが入っていたようですし、間違いなさそう。
もうひとつ、ニュルンベルクの東に位置するチェコでは肉の煮込み料理にスメタナ(サワークリーム)がよく使われるため、こっちも辻褄が合う感じ。
国境近くの町なら隣国の文化も入ってきやすいし、さまざまな地域の特徴が混ざった料理を作るご家庭って多そうですしね。
南ドイツやオーストリアのグラーシュをベースに、チェコのエッセンスを取り入れる形だと無理がなさそうですから、この方向で進めていきましょう。
という訳で、まずは具材の選定を。
料理風景から玉ねぎ・にんにく・じゃがいも、完成したシチューの図からにんじんが入っているらしいことが分かるものの、他は不明です。
オーストリアのグラーシュだと肉は牛肉が一般的ですが、ドイツのそれは豚肉が多いと聞くので今回はさくっと豚肉を採用。
野菜については普段作るシチューのようにセロリやマッシュルームも入れたいところですが、現地のグラーシュレシピを見ると、本当にシンプルというか簡素。
下手すると玉ねぎしか入っていないこともあるので野菜についてはいろいろと加えず、玉ねぎ・にんにく・じゃがいも・にんじんのみで作ってみましょう。
料理の先生役になってくれたカミラさんによれば「ベースは簡単な南部シチューだと思う」とのことですし、ミネストローネも失敗しちゃうヨルさんなので、下ごしらえする具材は少ないほど良いはず……。
サワークリームは手に入りにくいことも多いから、本ブログでよく登場している水切りヨーグルトで代用するとして。
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最後はスパイスやハーブ類。ドイツやオーストリアのご家庭レシピを見てみると、マジョラム
他はレモンの皮やクミンにキャラウェイシードが入ったり、カイエンペッパーでちょっとピリ辛だったりするものもあるようですが、今回は子ども時代のヨルさんたち姉弟や、アーニャちゃんのような幼い子も食べる前提。
風味づけもシンプルに、ハーブ類はパプリカとマジョラムだけで。ごくごく優しい味に仕上げましょう。
使う材料がおおかた固まったので、今回もさっそくスタートです。
ヨルさんの南部風シチューを作ってみよう
スパイファミリー|ヨルさんでも簡単!南部風シチュー
材料(3人家族分)
- シチュー用
豚バラブロック_300g
玉ねぎ_中1個
にんじん_1本
にんにく_1片
バター_10g
小麦粉_大さじ2
トマトペースト_大さじ1
白ワイン_大さじ1
コンソメキューブ_1個
パプリカパウダー_大さじ1
マジョラム_小さじ1/2(無ければローリエ1枚に代えてもOK)
塩_ひとつまみ
こしょう_適量
サワークリームまたは水切りヨーグルト_大さじ2
- 水切りヨーグルトを使う場合
プレーンヨーグルト_200g程度
- 付け合わせ用
卵_3個
じゃがいも_中3個
作り方
- 水切りヨーグルトの準備
- ティーポット用の茶こしにヨーグルトを入れ、半日〜1日ほど冷蔵庫に置いて水気を切っておく(写真のように茶こしをグラスなどに重ねると、ちょうど良く水分が切れます)
- 付け合わせの準備
- 卵は半熟の目玉焼きにし、じゃがいもは洗ったまま水を切らずラップで包み、600Wのレンジで5-7分ほど蒸しておく
- シチューの準備
- 豚肉は一口大、玉ねぎ・にんにくはみじん切り、にんじんも肉と同じくらいのサイズにカットしておく
- 深鍋を熱して豚肉の表面に焼き色を付け、いったん取り出しておく
- 同じ鍋でバターを熱し、玉ねぎとにんにくを加えて6-7分ほど炒める
- 玉ねぎがしんなりしたら、にんじんを加えてさらに5分ほど炒める
- 野菜に火が通ったら肉を鍋に戻し、小麦粉を振り入れて粉気が無くなるまでまんべんなく混ぜる
- 具材が被るくらいの水(分量外)にトマトペースト・白ワイン・コンソメ・マジョラム・パプリカ・塩を加えて一混ぜし、中火にかける
- 沸騰したらアクをすくい、弱火に落として40-50分ほど煮込む
- サワークリームか水切りヨーグルトを加えて一混ぜし、塩こしょうで味を整えたら出来上がり。蒸したじゃがいもと目玉焼きを添えて召し上がれ
ポイント
- 味のポイントは何といってもパプリカ! 多いかな……?と思うかもですが、控えめにせずしっかり加えるのがおすすめです。
- お子さんでも食べられる優しめの味つけなので、大人向けにパンチを効かせるならレモンや唐辛子をプラスしてもいいと思います。
食後のヒトコト
パプリカの香りが優しく、サワークリーム代わりの水切りヨーグルトでまろやか。
目玉焼きを崩しながら食べると、とろりと濃厚な黄身がシチューと混ざって堪らない美味しさです。
野菜も柔らかく煮込まれているし、トマトベースの甘めの味付けで食べやすいしで、これ子どもも好きだろうなあ。
頑張ってマスターした料理ですし、この南部風シチューはこれからフォージャー家の定番メニューになりそうですね。
いつかはアーニャちゃんも「ははの味」として受け継いでいくのかな?
素敵な嘘でいっぱいの家族の今後に幸あれと思いながら、今回もごちそうさまでした。