今回は、細田守監督の『おおかみこどもの雨と雪』から、主人公の花が作った印象的な焼き鳥を再現。
信州上田名物の美味だれスタイルの焼き鳥を、おおかみおとこのお父さんでも食べられるようアレンジして作りましょう。
おおかみおとこの「彼」のため、花が作った料理とは
コップ入りのタレにどぼん!花の焼き鳥は信州上田のご当地スタイル
自身の通う大学の講義に潜り込んだおおかみおとこの「彼」と恋に落ち、一緒に暮らすことになった花が夕食に作ったのがこの焼き鳥。
ピーマンが間に挟まった手作りの焼き鳥は、こんがりとしてそれだけでも美味しそうですが、グラスになみなみと入ったタレに串ごとどぼんとつけるユニークな食べ方も特徴的でした。
この特徴的な食べ方は花による創作ではなく、細田監督の別作品『サマーウォーズ』の舞台であり、監督夫人の故郷でもある長野県上田特有のもの。
上田市の焼き鳥店・鳥正の初代店主が昭和の時代に考案したとのことで、現在は地域の名物として広く浸透。ご当地グルメとして、「美味だれ(おいだれ)焼き鳥」の名称で親しまれているそうですよ。
参考:https://oidareyakitori.jp/about
材料・調理法の考察
オオカミにまつわる伝承については世界中に存在し、西洋では北欧神話の妖狼フェンリルやウェアウルフなどが有名。神や人に害をなす怪物としてのイメージが強いでしょう。
逆に東洋、特に日本でのオオカミは神様のお使いとして信仰の対象となったことも。
秩父にある三峯神社を中心にオオカミそのものを神格化した「御眷属信仰」なるものも存在し、西洋と東洋で性質は異なるものの、どちらも強い力を持つ畏怖すべきものとして扱われてきた歴史があります。
ただ、劇中で「満月の夜に変身したり、人を襲ったりするのはただの伝説だと知りました。」という台詞があるように、本作での「おおかみおとこ」はいわゆる普通の狼男像とは違う様子。
監督のインタビューなどからも、一般的な狼男のイメージとは異なるものとして描かれていることが窺えます。
西洋の狼男のように不死身に近い強靭な体を持っているわけでも、東洋における神使のオオカミのように神通力を使えるわけでもないようです。
超常の力を持つ存在ではなく普通のオオカミに性質が近いとするなら、イヌ科の動物に中毒を起こさせる食物の代名詞、ネギ属の野菜は食べちゃダメそう。
美味だれはにんにく風味という程度ではなく、すりおろしのにんにくをがっつり入れて作るため、おおかみおとこは食べたら危険ですね。
ということは、にんにくや玉ねぎなしでコクのあるタレを作らねばなるまい……。
また、焼き鳥が登場するシーンを見ると、花の焼き鳥は鶏肉+ピーマン+パプリカという組み合わせ。
これもネギ類がダメな彼のため、焼き鳥の定番ねぎまでない感じでしょうか。
経済的に恵まれているとはいえない彼らなので、安く手に入る食材としてピーマンは納得ですが、栽培が難しく収穫可能になるまでの期間も長いパプリカは今も昔もピーマンに比べて安くはないはず。
ごちそうなので奮発したのかな? いずれにしてもそれほど食費をかけられないだろうから、肉はお手頃な鶏むねで作ろう。
それからそうそう、今回はタレのコップも重要。
花さん昔から実家で使っていたものを持ってきたのかな? という懐かしい柄のガラスコップは、アデリアレトロのグラスが雰囲気ぴったり。
にんにくを使えないのは痛手だけれど方向性は固まったので、今回もスタートしていきましょう。
参考:https://www.mitsuminejinja.or.jp/saijin/
https://news.mynavi.jp/article/20130216-hosoda/2
美味だれ風の焼き鳥を作ってみよう
おおかみこどもの雨と雪|おおかみにも安心な美味だれ風焼き鳥
材料(2人分)
- ネギ類なしの美味だれ風ソース用
大根_3-4cm分(150g程度)
りんご_1/4個
しょうゆ_大さじ3
みりん_大さじ2
コチュジャン_大さじ1+1/2
ごま油_大さじ1
すりごま_大さじ1
お酢_小さじ1
しょうがチューブ_4-5cm分
- 鶏肉の漬け込み液用
水_1カップ
酒_大さじ1
塩_小さじ1
砂糖_小さじ1
- 焼き鳥用
鶏むね肉_1枚
ピーマン_4個
パプリカ_1個
作り方
- 鶏肉の下準備
- 水に漬け込み液用の材料を入れ、よく溶かしておく
- フォークを刺してまんべんなく穴を開けた鶏肉をジップバッグなどに入れ、1を注いで半日ほど冷蔵庫で漬けておく
- 美味だれ風ソースの準備
- 大根・りんごはすりおろしておく
- 耐熱容器に材料を全て入れて混ぜ、600Wのレンジで2分ほど加熱。一度かき混ぜて再度2分ほど加熱すれば完成
- 焼き鳥の準備
- 鶏もも肉はキッチンペーパーで水分を拭き取り、一口大にカット。ピーマン、パプリカも同じくらいのサイズにカットしておく
- 肉→野菜の順に交互に串に刺し、こしょうを軽く振る(最後が肉になるように刺すと抜け落ちにくい)
- サラダ油を引いたフライパンに皮目が下になるよう串を置き、なるべく動かさず4-5分ほど強めの中火で焼く
- こんがりと焼き色がついたら裏返して蓋をし、3分ほど焼いて火が通れば出来上がり。コップに入れたタレにどぼんと浸して召し上がれ
食後のヒトコト
こんがりと焼き色がついた鶏肉とピーマンに、コクのある甘辛味のタレが絡んでたまらなくジューシー。
串焼きの形になっているのも特別な感じがして、テンション上がります。
すりおろしの大根とりんごでとろみが加わっているので、お肉に絡みやすいのもいいですね。
ごま油やコチュジャンを加えているので十分コクがありますが、人間用ならチューブ生姜と同量のにんにくを入れて作っても良さそう。
市販の瓶入りタイプで本場の味を試してもいいですね。
今回のレシピだとたっぷり300ml近い量のタレができるため、コップにどぼんとしないスタイルなら他の肉料理に使ってもいいと思います。
焼き鳥のタレというより焼肉のタレに近い味わいで、鶏肉の他に牛や豚、サラダなどにかけても合いそう。
花たち家族の定番となったのも分かる美味しさ。家族や仲間とワイワイ食べれば、いっそう美味しく楽しくいただけますね。