スープ・ドゥ・ジュール「愛の芽生え」

記事には広告が含まれます 再現料理 海外の作品

美女と野獣|スープ・ドゥ・ジュール「愛の芽生え」

アカデミー作品賞にノミネートされた初のアニメ作品であるディズニー不朽の名作『美女と野獣』を元にした実写映画から、今回は美しい赤色が印象的なスープを再現。

甘く滑らかなビーツのポタージュは、バレンタインやホワイトデー、結婚記念日などのロマンティックなディナーにもぴったりです。

ディズニー実写版『美女と野獣』に登場する料理とは

ベルと野獣のディナーで出される真っ赤なポタージュ

魔法のかかったバラを思わせる真紅のバラのイメージ

今回再現する料理は、ディズニー実写版『美女と野獣』に登場するスープ。

少しずつ距離を近づけていくベルと野獣の姿を描いた、ディナーのシーンに登場していたお料理です。

はじめはスープチュリーン(サービング用の蓋付きスープボウル)に直接顔を突っ込んでスープを飲んでいた野獣が、ベルと打ち解けていくとともにスープ皿から飲むようになり、ベルはベルで野獣に合わせてカフェオレボウルのようにお皿を掲げてスープを飲んでみたり……という二人の歩み寄りが微笑ましいあのシーン。

スープの美しい真紅の色も相まって、まさに心に芽生えた愛を感じさせるような、素敵なシーンでしたよね。

材料・調理法の考察

赤色が鮮やかなビーツの断面

ディズニー映画の『美女と野獣』については実写・アニメ版ともに、1756年出版のボーモン夫人版をベースに、18世紀あたりの文化や習俗を取り込んで作品作りをしているようですが、この時代のフランスにビーツを使った料理はあったのでしょうか。 

画面から判別できるとろみと色具合からして、劇中で野獣とベルが飲んでいたスープはビーツを使ったポタージュのように思われるものの、ビーツはフランス原産の野菜ではありません。

そんな訳で、あれは本当にビーツなのかな? というところから調査開始。

ビーツについて書かれたオリヴィエ・ド・セールの『Théâtre d'agriculture』の一部。
betteraveは仏語でビーツのこと
参照:https://archive.org/details/thtredagricu03serr/page/88/mode/1up?ref=ol

現代の私たちが食べているビーツが一般庶民にまで普及したのは19世紀以降ではありますが、調べてみると、それに近い品種は16-17世紀のフランスにはもうあった様子です。

当時のフランスでは悪魔の植物として敬遠されていたじゃがいもを、食物として紹介したことで知られる16世紀の農学者オリヴィエ・ド・セールはビーツについて「イタリアから来たパースニップの一種(実際にはかなり違いますが)で茎も食用にでき、根は特に大変甘く色も美しい」と表現していますし、1651年に出版された料理人フランソワ・ピエール・ド・ラ・ヴァレンヌの著作でもその調理法が紹介されたりと、一部ではたしかに食用として認知されていたことが分かります。

シャンデリアのある、豪奢な貴族の邸宅内のイメージ

ビーツは加工しやすく色鮮やかで甘みもありますから、スープやソースの材料として新しもの好きな貴族などには好まれたでしょうし、魔女の呪いがかけられているとはいえ、野獣はもともと王子様。

流行りの珍しい野菜を食卓に取り入れていたとしても、何ら不思議はなさそうです。

という訳で、今回は最初の印象通りビーツのポタージュに決まり。

作り方についてはちょうどこの頃フランスで活躍し、数多くの料理本を残したムノンの『Cuisine et office de santé』に参考になりそうな部分があるので、それをベースにレシピを組み立ててみましょう。

参考:https://openlibrary.org/works/OL16877637W/Th%C3%A9%C3%A2tre_d%27agriculture_et_m%C3%A9nage_des_champs?edition=key%3A/books/OL24166053M

https://openlibrary.org/works/OL24963548W/Le_cuisinier_francois?edition=key%3A/books/OL33184535M

ビーツのポタージュを作ってみよう

美女と野獣|スープ・ドゥ・ジュール「愛の芽生え」

材料(多め2人分)

  • ゆでたビーツ_1株分(200g程度・水煮缶でもOK)

  • 玉ねぎ_1/2個

  • にんにく_1片

  • パセリ_1枝

  • バター30g

  • 水_2カップ

  • 牛乳_1/2カップ

  • コンソメキューブ_1個

  • 小麦粉_大さじ1

  • 塩こしょう_適量

作り方

  • ビーツはスライス、玉ねぎは繊維を断つよう薄切りにし、パセリ・にんにくも粗めに刻んでおく
  • 鍋でバターを熱して玉ねぎとにんにくを加え、焦がさないよう弱めの中火で10分ほど炒める
  • 玉ねぎに透明感が出てきたら一旦火を止めて小麦粉・ビーツとパセリを加え、粉気がなくなるまでよく混ぜる
  • コンソメと水を加えて中火にかけ、沸騰したら火を弱めて蓋をし、20分ほど煮込む
  • ビーツが柔らかくなったら火を止めて牛乳を加え、粗熱が取れたらミキサーなどにかけて滑らかなピューレ状にする
  • 漉し器にかけて裏ごしし、鍋に戻して軽く温める
  • 粘度が高いようなら牛乳か水を加えて調整し、塩こしょうで味を整えて出来上がり

食後のヒトコト

ビーツをたっぷり使った美しい赤色のスープ

たっぷりのバターで炒めた玉ねぎとビーツで、煮込んでいる間も甘い香りが漂って幸せな気持ちに。

滑らかな舌触りのポタージュはお砂糖を加えずとも甘く濃厚。しっかり満足感があります。

真紅のばらのように華やかな色合いで、一口飲めばトレビアン! 裏ごし作業はちょっぴり大変だけれど、手間をかける価値のある美味しさです。

ロマンティックなディナーのスタートにも、大事な大事なお客様のおもてなし用にもぴったりですが、バターたっぷりでカロリーは高め。

どうぞ食べ過ぎにはご用心しつつお楽しみくださいね。

再現料理のこぼれ話などはTwitterで!

Twitterはこちら

Instagramはこちら

OFUSEはじめました!

サポートしてもらえると喜んで、より面白い料理ネタ探しや素敵食材・レストラン紹介などに励みます

  • この記事を書いた人

宵闇

作者の心情や時代背景などを頭でっかちに考察しつつ、物語や歴史に登場する料理を作っています。お仕事のご依頼等については、お問い合わせフォームもしくはinfo@saigengohan.comよりどうぞ。

-再現料理, 海外の作品
-, , ,