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豆腐百珍|うま味マックス出汁の高津湯豆腐

1864年の10月8日は、昆布のうま味成分であるグルタミン酸の発見者・池田菊苗博士の生まれた日。

味覚の世界に「うま味」という概念をもたらした科学者にちなんで作るのは、その昆布出汁をたっぷり使ったあんかけ湯豆腐です。

池田菊苗博士と豆腐料理の関わりとは

うま味発見のヒントとなった湯豆腐の昆布出汁

今からおよそ100年ほど前まで、食べ物の味は甘味・酸味・塩味・苦味の4種類で説明できると考えられていました。

この味覚の世界に「うま味」という概念をもたらしたのが、1864年の今日生まれた池田菊苗博士の発見。

池田博士は妻が作った湯豆腐の昆布出汁にヒントを得て研究を重ね、昆布からうま味成分の「グルタミン酸」を抽出することに成功します。

グルタミン酸に続き、かつお節のイノシン酸・干ししいたけに含まれるグアニル酸などのうま味成分も続々と発見。

食材に存在する5つめの味「うま味」は「UMAMI」として、世界にも知られる存在になっていったのです。

おそらく4つの味以外に食べ物の美味しさに関わる要素があることについて、昔の人も感覚的には分かっていたのだろうなとは思います。

でも、博士の発見がなければ今日の私たちが「料理を作る際にはうま味が大切だ」という認識を持つことはなかったはず。本当に偉大な発見ですね。

参考:https://www.umamikyo.gr.jp/knowledge/discovery.html

江戸時代の豆腐料理本『豆腐百珍』からメニューをチョイス

さてさて、博士の偉大な発見のヒントとなった湯豆腐。どうせ作るなら、ちょっと面白いものがいいなあ。

豆腐料理といえばで思いつくのが、江戸期の有名豆腐料理本『豆腐百珍』。さっそく紐解いてみることに。

やっぱりありますよね、湯豆腐。

項目の6番目にゆでた絹ごし豆腐に熱いくずあんをかけ、からしを添えた「高津湯豆腐」という料理があるので、今回はそちらを作ってみましょう。

材料・調理法の考察

材料については豆腐に出汁用の昆布、それにあんかけのとろみ付けで使う片栗粉にしょうゆやみりんなどの調味料といったところですが、今回はその出汁の取り方がポイント。

昆布出汁というと「水にしばらく浸し、その後火にかけて沸騰寸前に取り出す」という方法がポピュラーだと思いますが、最近の研究で昆布のうま味成分を最も多く・効率的に抽出できる水温と時間が判明したんだそう。

記事の表題にもある通り、60℃のお湯に昆布を60分間浸すという方法ですね。この方法だと、通常の方法に比べて約1.5倍量のグルタミン酸を得ることができるのだとか。

スーパーなどでよく見かける、手頃なカットタイプの日高昆布でも一等品に迫る量のうま味を得ることができるので、試さない手はありません。

せっかくなら博士の発見したグルタミン酸、最大限引き出した出汁で作りたいですからね。

湯温のキープについては魔法瓶やスープジャーを使えば簡単ですが、一つネックになりそうなのが、どうやって60℃のお湯を得るのかという点。

温度調整機能付きのポットや調理用の温度計などがあれば60℃のお湯を用意するのは簡単ですが、どちらも無いよという人も少なくないと思います。

そこで参考にするのが、煎茶を淹れる際の湯ざましを作る方法。

室温や器の材質・サイズなどによって違いは出ますが、沸騰したてのお湯をやかんから茶器に移すと、温度は約10℃下がります。

これを利用して何度か器に移し替えれば、温度計なしでも60℃程度のお湯を用意することができるというわけ。

きっちり60℃は難しいものの、このやり方なら温度計なしでも簡単。具体的な方法はレシピからどうぞ。

高津湯豆腐を作ってみよう

豆腐百珍|うま味マックス出汁の高津湯豆腐

材料

  • 昆布出汁用
  • 出汁用昆布 15g

  • 水 600ml

  • 小鍋など 2個

  • 魔法瓶かスープジャーなど 1個

  • しょうゆあん用
  • 昆布出汁 100ml

  • ☆しょうゆ 大さじ1/2

  • ☆酒 小さじ2

  • ☆みりん 小さじ2

  • 片栗粉 小さじ1

  • 絹ごし豆腐 1丁

  • 練りからし 適量

  • 大根おろしや長ねぎなどの薬味 お好みで

作り方

  • 昆布出汁の準備
  • 小鍋などを2つ用意し、沸かしたお湯を鍋に移す(湯温は90℃程度に下がる)
  • もう片方の鍋に湯を移す(湯温は約80℃)。空になった鍋は流水で冷やしておく
  • 流水で冷やした鍋にもう一度湯を移す(湯温は約70℃)
  • 魔法瓶に移すと湯温は60℃程度に下がっているため、昆布を加えて1時間後に取り出せば出汁の完成
  • しょうゆあんの準備
  • 小鍋に昆布出汁100mlと☆の調味料を入れて火にかけ、沸騰寸前で止める
  • 1に水で溶いた片栗粉を加え、弱-中火で加熱してとろみをつける
  • 仕上げ
  • 土鍋などに昆布出汁の残りを入れて火にかけ、豆腐を温める
  • 豆腐が温まったらしょうゆあんをかけ、練りからしと薬味を添えれば出来上がり

食後のヒトコト

あっさりなのにうま味が濃く、淡い味のしょうゆあんで優しくまろやか。

淡白な湯豆腐はかつお節も加えた合わせ出汁で作りたくなりますが、昆布だけでも十分満足感がありますね。さすがうま味1.5倍。

今回は豆腐百珍の元レシピにならい、練りからしを添えていただきましたが、どちらかというとわさびや生姜が合うかも。

とろりとしたしょうゆあんに生姜なら、さらに身体をあたためてくれそうです。

それにしても、食べ終えた後も出汁の味わいの余韻が残るのすごいなあ……。

昆布のうま味を噛みしめながら、今回もごちそうさまでした。

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  • この記事を書いた人

宵闇

作者の心情や時代背景などを頭でっかちに考察しつつ、物語や歴史に登場する料理を作っています。お仕事のご依頼等については、お問い合わせフォームもしくはinfo@saigengohan.comよりどうぞ。

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