今回は夏の特別編ということで映画やドラマ作品ではなく、ホラー作品を生み出した作家自身にスポットを当てて再現料理づくり。
夏の終わりに生まれた怪奇作家といえば……そう、ホラー好きなら知らない人のいないあの方です。
ホラー作家の先駆け的存在・ラヴクラフト
夏生まれの怪奇作家といえば、ホラーに「コズミックホラー(宇宙的恐怖)※」という概念をはじめて持ち込んだ先進的な作家、ハワード・フィリップス・ラヴクラフト(1890年8月20日 - 1937年3月15日)を忘れてはいけません。
ラヴクラフトは不遇の人で、生前は作品が売れずほぼ無名のままその生涯を閉じましたが、死後に彼の作品世界を愛する友人たちが作品集を出版。
その後、独特の世界観が広く世に知られるようになり、架空の神話「クトゥルフ神話」が作家たちの手によって体系化されると、彼の生み出した作品世界はさらに拡大していきます。
キング原作の『ミスト』に登場するモンスターのデザインもクトゥルフ神話にヒントを得ているそう
ホラーにさほど詳しくない人でも「クトゥルー」「クトゥルフ神話」という響きを耳にしたり、映画や漫画作品の中でタコモチーフの怪物などを目にしたことがあるはず。
ホラーを中心に本当に数多くの作家や作品に影響を与えているので、気づかずラヴクラフトの世界観に触れている人も多いかもしれませんね。
※対話はおろか人間には到底理解不能な、得体の知れない異次元の存在からもたらされる恐怖のこと。ラヴクラフト以前の怪奇作品といえば、狼男や吸血鬼などのいわば「分かりやすい」怪物が登場するものが大半でしたが、彼の作品で描かれた恐怖はこれらとは全く別種のものでした。
ニューイングランド地方の大鍋バーベキュー・クラムベイクとは
さて、ラヴクラフトの作品世界の舞台としてよく登場するのがニューイングランド地方。
名前通りイギリスの影響を特に濃く受けたニューイングランド地方には、「クラム(ハマグリ)」をはじめとするさまざまな魚介類や、じゃがいもにコーンなどの野菜を放り込んで蒸しあげる大鍋版バーベキューのような料理・クラムベイクがあります。
現地の伝統的なパーティー料理だし見た目も豪快だし、偉大な怪奇作家のお祝いにぴったり!
なはずなんですが、ラヴクラフトは大変な魚介類嫌いだったそう。見るのもおぞましいと感じるほどだったので、彼の著作に登場する邪神や怪物の多くが海洋生物モチーフなわけで……。
こうなると祝いというより呪いじゃないかという気もしますが、ラヴクラフトと言えば多くの人から「タコ・イカ・カニ」のイメージが出てきちゃうんで仕方ないですね。
誕生祝いというより嫌がらせっぽくもありますが、食べる私たちに祝う気持ちがあれば良し!
具材はもちろんシーフードのうまみが溶け出したスープもたまらないクラムベイク、さっそく作っていきましょう。
ラヴクラフトに捧げるクラムベイクを作ってみよう
今回の献立は以下の通り。
ダークカラーの器にタコの足や吸盤をそれっぽく盛り付ければクラムベイクだけでも気分が出ますが、よりラヴクラフト感を出したい方はサーモンヘッドベイクも一緒にどうぞ。
- ラヴクラフトに捧げるクラムベイク
- エンチラーダソースで食べるサーモンヘッドベイク
H.P. ラヴクラフト|深きものどもの宴-ラヴクラフトに捧げるクラムベイク-
材料(2-3人分)
タコ 150g
ハマグリかアサリ 200g
ムール貝 300g
プチトマト 10-12個
マッシュルーム 8個
じゃがいも 中2個
玉ねぎ 中1個
白ワイン 1カップ
ローリエ 1枚
タイム 小さじ1/4
塩こしょう 適量
作り方
- 活アサリを使う場合は砂出しをしておく
- 玉ねぎはくし切り、マッシュルームは1/2カット・じゃがいもは1/4カットにしておく
- 鍋に白ワイン・ローリエ・タイム・塩こしょうを入れ、その上に玉ねぎ・じゃがいもを重ねて沸騰させ5-6分ほど中火で加熱する
- 貝類を加えてさらに10分ほど加熱
- 貝の殻が開いてきたら残りの材料を入れ、全体に火が通ったら出来上がり
エンチラーダソースで食べるサーモンヘッドベイク
材料
鮭の頭 1匹分
塩 適量
- エンチラーダソース
プチトマト 10個程度
にんにく 1/2片
ケッパー 大さじ1
酢 大さじ1/2
パプリカ 小さじ1/4
クミン 小さじ1/4
コリアンダー 小さじ1/4
塩 適量
チリパウダー お好みで
作り方
- エンチラーダソースの準備
- プチトマト・にんにく・ケッパーはみじん切りにしておく
- 耐熱容器にソースの材料をすべて入れ、よくかき混ぜる
- 600Wのレンジで1分30秒ほど加熱し、プチトマトがしんなりすればソースの完成
- 鮭の準備
- オーブンは200℃に予熱しておく
- 鮭の頭全体に塩をよくすり込んで30分ほど置き、キッチンペーパーなどで余分な水分をとっておく
- 鮭の内側を表にして天板などに並べ、オーブンの上段で5-7分ほど焼く
- 裏に返してソースをたっぷりかけ、15分ほど焼き上げたら出来上がり
食後のヒトコト
ラヴクラフトの作品から生まれた怪物たちは今や、かわいいキャラ化までされている愛されぶり。
最近だと、ラヴクラフト作品の世界観に1950年代アメリカの社会情勢も絡めたドラマシリーズ『ラヴクラフトカントリー 恐怖の旅路』なんて作品も登場したりして、ほんと引っ張りだこですね。
この状況をラヴクラフトが見たらどう感じるんでしょう? ちょっと興味があるところです。彼の作品に想いを馳せながら、今回もごちそうさまでした。