古代ローマの都市・ポンペイ近くのヴェスヴィオ山で大きな噴火があったとされる8月24日。
この日に作ったのは、当時の料理本『Apicius(アピシウス)』からエンドウ豆を使ったスープ料理でした。
A TEMPTING DISH OF PEAS(誘惑的なエンドウ豆の料理)
古代ローマ時代の料理本『アピシウス』からレシピをチョイス
ポンペイだけでなく周辺の都市も一夜にして消滅した2000年前の大噴火は多くの犠牲者を出した痛ましい出来事ですが、現地では今なお新たな発見があり、考古学だけでなく火山学や地質学の資料としても大きな役割を果たしているんだそう。
古代ローマ時代の食文化に関する良書としては『古代ローマの饗宴』が有名。でも『アピシウス』だけに触れているわけではないので、全文読めるProject Gutenbergはありがたいですね。
そんな古代の出来事を想いつつProject Gutenbergで読める同書の英語版からレシピを探してみると、ちょっと興味深い料理を発見。
PISAM ADULTERAM VERSATILEM:A TEMPTING DISH OF PEAS(誘惑的なエンドウ豆の料理)
料理名からは分かりませんが、該当部分を読むとエンドウ豆と鳥類の肉・レバーに香味野菜などの薬味をたっぷり合わせ、出汁でさっと煮たスープ料理のようです。
古い時代の料理については代替の材料も思い当たらないなんてことはよくありますが、ざっと読んだ限りクリアできそう。
何がどう誘惑的なのか? という部分は気になるものの、ひとまず材料について探ってみることにします。
まずは材料の下調べ
現代のレシピ本と違って分量などが細かく書かれているわけではないんですが、「PISAM ADULTERAM VERSATILEM」の項目から分かる材料は以下の通り。
- エンドウ豆
- 脳みそまたは小鳥、もしくは骨付きツグミ
- ルカニアンソーセージ
- 鶏レバー
- リーキ
- グリーンコリアンダー
- ラベージ
- 出汁
- 黒こしょう
エンドウ豆はグリーンピース・小鳥は鶏肉・リーキは長ネギ・グリーンコリアンダーはパクチーで作るとして、今回の問題はルカニアンソーセージとラベージですね。
まずルカニアンソーセージ。こちらはイタリア南部にかつて存在したルカニア地方で作られていたもので、牛もしくは豚を使ったスパイシーな味わいのソーセージだったようです。
現在販売されているものについては、しっかり硬化させたドライソーセージタイプということが多い様子。香辛料の効いたドライソーセージであれば、サラミソーセージが使えますね。
もう一つのラベージについてはセリ科のハーブなのですが、現在はごく一部の地域でしか使われなくなっているそう。
ただ、ラベージはイタリア語で「Sedano di Monti(山のセロリ)」と呼ばれるように同じくセリ科のセロリに似ているらしいので、セロリの葉で代用することにしましょう。
誘惑的なエンドウ豆の料理を作ってみよう
材料の調査が終わったところで調理スタート。詳しい分量などは以下の通りです。
ちなみに、鍋3つに分けて調理せよとの指示は原本に書かれていることなのであしからず。洗い物が増える・めんどくさい等のクレームは著者のアピシウスまでどうぞ。
アピシウス|誘惑的なエンドウ豆の料理
材料(2人分)
冷凍グリーンピース 100g
鶏もも肉 100g
鶏レバー 100g
サラミソーセージ 5-6枚(15g)程度
長ネギ 10cm分
パクチー 1束
セロリの葉 2つかみほど
コンソメキューブ 1個
水 400ml
オリーブオイル 適量
粗挽き黒こしょう 適量
作り方
- 小鍋を3つ用意する
- 鶏レバーは付着した血を掃除して一口大、鶏肉も同じくらいのサイズにカットしておく
- 長ネギは小口切り、パクチーとセロリの葉・サラミは細かく刻んでおく
- 鍋1で油を熱してサラミ→肉類→グリーンピースの順に炒める(グリーンピースには火が入りすぎないよう、ごく軽く)
- 鍋2に少量のコンソメスープを入れ、長ネギとパクチーにさっと火を通してオリーブオイルをふる
- 鍋3でスープを沸かして刻んだセロリの葉を軽く茹で、必要なら塩(分量外)で味を整える
- スープ皿の中央に鍋1の中身を置いてそのまわりに鍋2、最後に鍋3のスープを注ぎ、黒こしょうをかけたら出来上がり
食後のヒトコト
もの自体はごくシンプルなくせに鍋3つも使うという若干めんどくさい一皿でしたが、ぷちっと弾けるグリーンピースの食感に鶏肉とレバーでお肉もしっかり、パクチーやセロリの薬味も効いて大変美味しいスープでした。
パクチーやレバーが苦手な人には拷問みたいなメニューだと思いますが、鮮やかな緑色も美しく、食べると元気が出そうな味わいです。
最後に気になっていた「TEMPTING(誘惑的)」について。英語版の翻訳者メモによると、これはどうやらエロ的な意味なんだそうで。
ただ材料にそういった効果があるのか、作り方が重要なのか詳しいところはこのレシピからは分からずじまい。
ラベージは愛のハーブとされてきた歴史がある……という記事も見かけるのでそれが理由かなとも思いますが、信憑性の高い資料ではないので微妙です。
いろんな意味で味わい深い一皿、仄かに残る謎も含めてごちそうさまでした。