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兵士のための料理マニュアル|キャプテン・サンダーソンの豚汁

1862年の9月22日は、リンカーン大統領によって奴隷解放宣言の第1部が発表された日。

この日にちなんで再現するのは、当時の軍隊で食べられていた料理です。

南北戦争時代の行軍中に食べられていた料理とは?

北軍の料理マニュアルでレシピをチェック

奴隷解放宣言が発表された頃といえば、南北戦争の真っただ中。

行軍というと食料不足の問題がつきものではありますが、この時代には食料自体だけではなく、別の問題もありました。

それは、従軍していた兵士の大多数が「料理なんてした全くしたことがない」男性だったということ。

料理は妻や使用人がするのが当然の時代だったので、男性が台所に立つ機会ってほぼなかったんですね。

でも戦場では自分たちで食事を用意する必要があるため、経験がない兵士も早急に料理スキルを身につけなければならない……。

そこで必要とされたのが、今回再現する料理が掲載されている『Camp Fires and Camp Cooking; or, Culinary Hints for the Soldier, etc』のようなマニュアル。

こちらは北軍のキャプテン・サンダーソンによって書かれた野外での料理の心得やレシピをまとめた資料で、北軍の主力部隊だったポトマック軍で配布されたものだそうです。

参考:https://www.pbs.org/food/the-history-kitchen/civil-war-cooking-what-the-union-soldiers-ate/

料理どころか、食事の準備や皿の片付けなどについても今までまーったくしたことがない人に向けて書かれたものなので、内容はめちゃくちゃ初歩的。

調理器具や食材は清潔にしておくべしとか、調味料は使いすぎるなというところから始まってます。

家事全般したことがない人向けだから、まあそこからだよねという感じ。

料理についても同様で、お茶の淹れ方やベーコンの焼き方などの基本から懇切丁寧に書かれています。

特にじゃがいもの茹で方の項目などは、「じゃがいもなんて誰でも茹でられると考えられがちだが、上手にできる人はあまり多くない」的なことが書いてあって、なかなか味わい深い。

いつの時代も料理しない人に限って簡単にできると思っちゃうものなんだなあと。

マニュアルではありますが、キャプテンの人柄などもうっすら滲んでいて読み物としても面白いですよ。

材料の考察

そんなキャプテンのレシピではビーフシチューやフライドポテトなどの料理が掲載されていますが、今回は「PORK SOUP WITH VEGETABLES(野菜入りポークスープ)」をチョイス。

野菜入りのポークスープ……野菜と豚肉が入った汁物……、つまりは豚汁ですね。

ざっくり言うと豚肉と野菜を切って鍋で煮るだけだし、豚汁って野外で作ることも多いしで、まさにそんな感じ。

材料については以下の通りで、まず気になるのが「乾燥野菜」でしょうか。

  • 豚ブロック肉
  • 古くなったパン
  • 乾燥野菜
  • 塩こしょう

この乾燥野菜というのは、カブやビーツ、にんじん・玉ねぎ・ジャガイモ・キャベツ・トマト・セロリ・豆類などを細かく切ってミックスし、乾燥させてレンガ状に固めた食品のこと。

長期にわたる行軍で壊血病になることを防ぐため、野菜を携行しやすい形にするべく開発されたものですが、栄養はともかく、味はどうやら激マズだったようです。

参考:https://www.civilwarmed.org/vegetables/

厳密に再現するなら野菜は乾燥させて使うのでしょうが、美味しいものをわざわざ不味くするのは忍びない……。

このブログのモットーは「作りやすい材料でなるべく寄せる」ですし、マニュアルを書いたキャプテン本人もできれば新鮮な野菜で作りたかったはず。

なので、野菜はいつも通りのもので作りましょう。当時の兵士たちが食べたかったであろう、夢の豚汁になりそうだし。

種類については製造元によって少しずつ違ったようですから複数の資料を見比べて、よく登場しているにんじん・玉ねぎ・セロリ・ビーツにインゲン豆を選択。

豚については十中八九塩漬け肉でしょうが、塩漬けから作っているといつになるか分からないため、塩をまぶした肉でOKということで。

他はパンがあれば、夢の豚汁の食材準備は完了。

さてさて、あとは作るだけ。

キャプテン・サンダーソンの豚汁を作ってみよう

野菜も肉もたっぷりでボリューム満点。
兵士でなくとも元気を出したいときにいいですね。

兵士のための料理マニュアル|キャプテン・サンダーソンの豚汁

材料(2-3人分)

  • 豚バラブロック 150g

  • 下茹でしたビーツ 1/2株分(100g程度・水煮缶でもOK)

  • 玉ねぎ 1/2個

  • にんじん 1/2本

  • セロリ 1/2本

  • 豆の水煮(白インゲンや大豆などお好みで) 100g

  • 食パン 1枚

  • 酢 大さじ1

  • 塩 小さじ1

  • こしょう 適量

作り方

  • 食パンはトーストし、3cm角ほどの大きさにカットしておく
  • 玉ねぎ・セロリは薄切り、ビーツ・にんじんはいちょう切りにしておく
  • 豚肉は一口大に切り、塩とこしょうを揉み込んでおく
  • 鍋にサラダ油(分量外)を引き、豚肉を焼いて表面に焼き色を付ける
  • 肉に火が通ったらにんじん・玉ねぎ・セロリを加えて5分ほど炒める
  • 野菜がしんなりしたら、具材が被るくらいの水とビーツを加えて中火にかける
  • 沸騰したらアクをすくい、酢を加えて弱-中火で15分ほど煮る
  • 7に豆とパンを加えて7-8分ほど煮込み、必要なら塩こしょうで味を整えて出来上がり

ポイント

  • ビーツをカブに変えたり、キャベツやじゃがいも・トマトなどを加えてさらに野菜たっぷりにするのもおすすめです。

食後のヒトコト

ボリュームのある豚肉に豆とパンが加わって、しっかりした食べ応え。ビーツの甘みにセロリの香りで深みがあり、お酢のさっぱり感で後味も爽やかです。

スープの赤い色合いもきれいで、見た目にも食欲をそそります。初心者向けのマニュアルに載っていた料理ですから、手間なく簡単に作れるのもいいですね。

ちょっと変わった豚汁が食べたいときや、料理をはじめて間もない人のレパートリー拡大にも良さそう。

「このスープ、入ってるのが乾燥野菜じゃなかったらなあ」なんて思っていた当時の兵士も、これならきっと喜んで食べたはず。

色々と疲れている現代の私たちの活力にもなってくれそうだなあなんて考えながら、今回もごちそうさまでした。

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  • この記事を書いた人

宵闇

作者の心情や時代背景などを頭でっかちに考察しつつ、物語や歴史に登場する料理を作っています。お仕事のご依頼等については、お問い合わせフォームもしくはinfo@saigengohan.comよりどうぞ。

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