1896年の9月24日はアメリカ狂騒の時代に燦然と輝いた作家、F・スコット・フィッツジェラルドの生まれた日。
この日にちなんで再現するのはシーフードオードブルの定番、シュリンプカクテルです。
シーフードオードブルの定番・シュリンプカクテル
牡蠣のカクテルから派生したエビ料理
現在ではオードブルとして定着しているシュリンプカクテルですが、そういえばいつ頃から食べられていた料理なんでしょう?
英国や米国で大きく流行したのは1960年代頃だそうですが、登場自体はもっと古く、1920年代には既にあった様子。
ただ、シュリンプカクテルについては最初からエビ料理として考えられたものではなく、もともとは牡蠣のカクテルがはじまりだったようです。
19世紀のアメリカでは「オイスター狂い」なんて言われるほど牡蠣がもてはやされた時期があり、さまざまな調理法で楽しまれていました。
牡蠣のカクテルもその一つとして人気を博していたらしく、1889年7月4日発刊のシカゴトリビューン紙でも記事として取り上げられているのを確認することができます。
参考:https://www.chicagotribune.com/dining/craving/ct-food-shrimp-cocktail-history-drink-0522-story.html
その後、漁獲量の減少により牡蠣の流行が下火になるにつれ、オイスターカクテルは牡蠣だけでなく他のシーフードでも作られるようになっていったそうで。
20世紀に入ると家庭向けの料理本などにもちらほらと登場するようになり、1924年に書かれた『Home partners』内の「LOBSTER, CRAB, SHRIMP; OR OYSTER COCKTAIL」のレシピでは、使用する魚介類の例として「SHRIMP(小エビ)」もしっかり紹介。
2013年の映画でも原作の小説でもこの料理が登場していることが明記されている訳ではありませんが、パーティーなど華やかな席につきものの前菜だったことは確かなよう。
1922年に書かれた料理本でも、結婚記念日向けディナーのアペタイザーとして紹介されています。
1922年。そう、1896年の今日誕生したスコット・フィッツジェラルドの代表作『華麗なるギャツビー』の舞台となった時代ですね。
原作の小説にはギャツビー邸のビュッフェテーブルの上に「光り輝くような」華やかなオードブルをはじめとするごちそうが並んでいるという描写があるので、シーフードカクテルのようなメニューは含まれていたはず。たぶん絶対。
想像力(妄想力)をたくましくし、『華麗なるギャツビー』の世界でも食べられていたであろうシュリンプカクテルを、物語の舞台である1922年に書かれたレシピを元に作ってみることにしましょう。
材料・調理法の考察
今回参考にする『Everywoman's cook book』掲載のレシピを見てみると、材料は以下の通り。
- シーフード
- セロリ
- ケチャップ
- レモンジュース
- ホースラディッシュ
- タバスコ
- 塩
このレシピでは食べやすくカットしたシーフードをソースで和えているので、尾付きのエビを使ったよくあるシュリンプカクテルとは違いますね。
とはいえ、ソースについては材料を用意して混ぜるだけ。
冷凍のむきエビを使えば、背ワタの処理などもないので手軽です。小エビならカットする必要もなし。
エビの下処理とゆで加減がポイントですが、それにさえ注意すれば問題なさそう。さっそく作ってみましょう。
シュリンプカクテルを作ってみよう
華麗なるギャツビー|ジャズ・エイジのシュリンプカクテル
材料(2-3人分)
- 塩水解凍用
水 1カップ
塩 小さじ1
- エビの下茹で用
水 800ml程度
料理酒 大さじ1
- シュリンプカクテル用
冷凍むきエビ 150g
セロリ 1/2本
ケチャップ 大さじ1と1/2
レモン果汁 小さじ2
ホースラディッシュ 小さじ1/2
タバスコ 5-6滴
クラッカー お好みで
作り方
- ボイルエビの準備
- 水に塩を溶かして3%濃度の塩水を作り、エビを30分程度漬け解凍しておく
- 鍋で湯を沸かし、沸騰したら酒とエビを入れ2-3分ほどゆでる
- ざるに上げ、冷ましておく
- 仕上げ
- セロリはみじん切りにしておく
- ボウルなどに調味料を全て入れて混ぜ、1とエビを加えてよく和える
- よく冷やしてカクテルグラスに盛り付ければ完成。クラッカーと一緒に召し上がれ
ポイント
- チューブ入りわさびの大半は本わさびより西洋わさびが多く使われているため、色が少し悪くなることを気にしなければホースラディッシュの代わりに使えます。
食後のヒトコト
ぷりっとした小エビに、香り高くぴりりと辛みのあるソースがベストマッチ。
オードブルなので大量にいただくようなものではないんですが、もっと作ってたくさん食べたくなってしまう……。
食欲を増進させる、前菜としての役割をしっかり果たしてくれる一品です。
今回は小エビを使いましたが、元のレシピではカニやロブスター、牡蠣などシーフードなら割と何でもOKという雰囲気。
イカやタコを使ったり、もっと手軽にシーフードミックスで作ってもいいかもしれません。
他の魚介類にアボカド・きゅうりなども加えれば、豪華なサラダにもなりそう。狂騒の20年代ジャズ・エイジを彩ったカクテルソースで食べるサラダ、なんとも味わい深い響きです……。
華やかで虚ろな時代を駆け抜けたギャツビーとフィッツジェラルドを思いながら、今回もごちそうさまでした。