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鬼滅の刃|荻本屋の五目うどん

今回は『鬼滅の刃 遊郭編』から、伊之助が潜入する「荻本屋」のシーンで登場するうどんを再現。

花魁たちも食べていたであろう昔ながらのうどんで、大正ロマン気分をご堪能あれ。

遊郭編に登場するうどんとは

伊之助にぶん投げられた哀れなうどんは、卵・しいたけ・ねぎ・かまぼこ・小松菜の五目うどんタイプ

今回再現するうどんは原作漫画だと73話、アニメ『鬼滅の刃 遊郭編』では第3話冒頭に登場するもの。

音柱・宇髄天元の妻の一人、まきをを探しに伊之助が潜入する「荻本屋」で、まきをの部屋前に置かれていた食事ですね。

朱塗りの盆の上に置かれたうどんは、卵・しいたけ・ねぎ・かまぼこ・小松菜のような菜っ葉を乗せたオーソドックスな五目うどん。

このうどんは鬼の追跡中に伊之助にぶん投げられてしまうため、残念ながら誰の口にも入りませんでしたが、本作に登場する食事の一つとして記憶に残っている方もいるかもしれません。

材料・調理法の考察

炭治郎たちが活躍した大正初期頃の吉原の様子
参照:https://digitalcollections.nypl.org/items/c26322c6-3b3d-69f1-e040-e00a18061651

鬼滅の刃に登場するうどんといえば、炭治郎と禰󠄀豆子が浅草に出てきた時に食べていた屋台の山かけうどんも印象的でした。

実際、炭治郎たちが活躍した大正期の東京ではうどん屋台がポピュラーだったようで、特に冬の時期には鍋焼きうどんの屋台で溢れていたという話も残っています。

『鍋焼きうどん——』の呼聲は、二上がり新内の流しに次いで寒夜の東京を詩化する一種の聲楽である。中にはあの透通った、身に沁みるやうな聲に惚れて、食べてみやうといふ気になる人があるさうだ。

(中略)

うどん屋の本場は、京橋八丁堀に本所太平町附近、此の二ヶ所だけでも冬になると五百人からの鍋焼屋ができる。その他市内全部を合したら千五百人以上もあらうとのことだ。何しろ東京名物の一つであって、割合に儲かる際物家業であるからだ。

引用:国立国会図書館デジタルコレクション『商売百種渡世の要訣』https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/906977/19

東京中で1500以上もの出店があったとのことですし、うどんに限らず人の集まる吉原の近くには焼き鳥屋やおでん屋など、数多くの屋台が出ていたそう。

当時、屋台などから出前を取る自由が許されていたのは一部の高級遊女だけでしたが、潜入したまきをさんも花魁ではないものの、個室を与えられる身分だった様子です。

であれば、彼女の部屋の前に置かれていたうどんも近所の屋台から出前したものと考えるのが自然かな?

ときと屋の鯉夏花魁に懐いていた2人のような、遊女見習いの禿ちゃんたちが買いに走ったのかも。姿がなんとなく想像できますね。

屋台のうどんであると仮定したところで、早速材料などの考察開始。

アニメだとうどんに乗っている具がしっかり確認できますし、公式のコラボカフェでもおおむね同じような感じなので、具は卵にしいたけ、ねぎ、かまぼこに小松菜の5種類で。

器は土鍋などではないようなので、鍋焼きではなく五目うどんというところでしょうか。それにきゅうりの漬物と緑茶が添えてある……といったところ。

大正時代のビジネス指南書『商売百種渡世の要訣』でうどん用の仕入れ材料を見ると「醤油・鰹節・味醂・砂糖」の項目が確認できますし、舞台は東京ですから、しょうゆとみりん、砂糖を使った甘めの「かえし」をかつお出汁で割った関東風のうどんつゆで作るのがいいかな。

現代のように便利なパックだしや顆粒だしなんてない時代なので、今回はひと手間かけてかつお節でだしを取るところから。

ラフな屋台のうどんですから、かつおの一番だし・二番だしも余さず混ぜて作るとそれっぽいかも。

ところで、うどんの具の一つとして乗せられているかまぼこらしきもの、富山や長崎などで見られる「赤巻かまぼこ」のようなんですよね。

加熱してある食品とはいえ、東京のうどん屋台で使われるのかなあ……? このへんはちょっと不思議な気もしますが、とりあえず始めていきましょうか。

参考:https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/906977/19

https://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/907590

五目うどんを作ってみよう

鬼滅の刃|荻本屋の五目うどん

材料(2人分)

  • 一番だし用
  • 水_500ml

  • かつお節_15g

  • 二番だし用
  • 水_500ml

  • かえし用
  • しょうゆ_大さじ2+1/2

  • みりん_大さじ2

  • 砂糖_大さじ1

  • その他の材料
  • うどん_2束(乾麺の場合)

  • 卵_2個

  • しいたけ_2枚

  • かまぼこ_4切れ

  • 小松菜_1株

  • 長ねぎ_適量

作り方

  • だしの準備
  • 鍋でお湯を沸かし、沸騰したら火を止めてかつお節を入れる
  • 2分ほど置いてかつお節が沈んできたら、ざるなどで漉す(一番だしの完成)
  • 鍋に2で使ったかつお節と水を入れて火にかけ、沸騰したら弱火に落として5分ほど加熱すれば完成(二番だし)
  • かえしの準備
  • 耐熱容器に材料を全て加え、よく混ぜておく
  • 600Wのレンジに1分半ほどかけて沸かし、砂糖が溶けたらかえしの完成
  • 仕上げ
  • かまぼこは厚さ3mm程度のスライス、長ネギは小口切り、小松菜は長さ3cmほどのざく切り、しいたけは軸を落としてかさに十字の切り込みを入れておく
  • かえしとだしを鍋に入れて火にかけ、沸騰したらしいたけを加えて弱火にして5分→小松菜を加えて2分ほど煮て、火が通ったら具を取り出しておく
  • パッケージの表示時間通りにうどんを茹で、流水でぬめりを取って水気を切っておく
  • 2にうどんを加えて1分ほど温めたら器に盛って卵を落とし、残りの具材もトッピングして出来上がり

ポイント

  • えぐみや臭みが強く出てしまうため、かつお節を漉す際には絞ったりしないよう注意。
  • 二番だしを取った後のかつお節は、しょうゆを絡めてフライパンで炒れば美味しいふりかけになります。捨てちゃうのもったいない!

食後のヒトコト

しょうゆの効いたかつおだしのスープに、甘めの味付けがちょっぴり懐かしい印象。

香りの良い一番だしに濃いうま味の二番だしも混ぜているので、かつおの風味をしっかり味わえます。

つやつやの黄身を割ってうどんに絡めれば、また味が変わるのもちょっとしたお楽しみといった感じです。

作中では誰にも食べてもらえなかった哀れなうどんでしたが、鯉夏さんのような花魁たちも自室でこうしたうどんをすすっていたかと思うと、なんだか不思議な気持ちになりますね。

ちなみに、遊郭編に登場するときと屋・荻本屋・京極屋、3つの店のモデルとされる大阪・飛田新地の「鯛よし百番」は、今も料亭として営業しています。

現在は休業中ですが、来年の1月には再オープンするとのこと。

場所が場所なので訪れる際にはタクシーを使う・周辺のお店を無闇に撮影しないなど(飛田新地には撮影NGの場所が数多くあります)の注意点はありますが、豪華絢爛な遊郭の雰囲気を味わえるのは日本でもおそらくここだけ。

作品の雰囲気を味わいに訪れてみるのもいいかもしれませんね。

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  • この記事を書いた人

宵闇

作者の心情や時代背景などを頭でっかちに考察しつつ、物語や歴史に登場する料理を作っています。お仕事のご依頼等については、お問い合わせフォームもしくはinfo@saigengohan.comよりどうぞ。

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