ギレルモ・デル・トロ監督によるロマンティックな大人のおとぎ話、『シェイプ・オブ・ウォーター』。美しい翠色と赤が全編を彩る映画にちなんで作るのは、本作の悪役として登場する軍人・ストリックランドにまつわるゼリーのデザート。
きらめく泡が浮かぶ、3層仕立ての大きなゼリー。レトロなゼリー型で作れば、不思議な雰囲気のデザートが完成します。
ストリックランド家の団欒に登場したデザートとは
いかにもアメリカ的なホームメイドのゼリーパフェ
本作の悪役として登場するストリックランドは、1960年代アメリカのマッチョイズムを体現したような人物。
朝鮮戦争で功績を上げたエリート軍人という地位があり、広々とした郊外の一軒家で美しい妻と可愛らしい子どもに囲まれて暮らす彼は、あの時代のアメリカ男性の理想を体現したような存在でしょう。
発話障害のある主人公や、異形の「彼」がマイノリティ側とするならストリックランドは圧倒的なマジョリティー側ですが、そこはデル・トロ監督の物語。
高圧的で冷酷という典型的な悪役でありながら、「強くまともな男であり続けること」に苦悩するキャラクターとしても描かれていたのが印象的でした。
そんな彼が自宅で寛ぐシーンで登場するのが、今回再現するゼリーパフェです。
居心地がよさそうなリビングでソファーに座り、家族でテレビを見るという団欒のシーンで彼の妻が運んできた、大きなゼリーのお菓子ですね。
デコラティブなゼリー型で作られたそれは、まさに幸せな家族にぴったりのホームメイドデザートといった雰囲気。
ただ、この後ストリックランドに待ち受ける運命を考えると、手作りの可愛らしいデザートが儚いものに思えてなりませんでしたが……。
材料・調理法の考察
さて、劇中で登場するこのゼリーパフェ。おそらくはアメリカで現在でも最も有名なゼリーミックス「Jell-O」を使って作られているものでしょう。
Jell-Oについては120年以上もの歴史があるゼラチンデザートのブランドですが、アメリカでは特に、戦後のベビーブームの時代に流行していたそう。
50-60年代のサバービア(郊外の一戸建てが集まる住宅地)が登場する映画やドラマなどでは食後のデザートや、ホームパーティーのシーンなんかで出てくるイメージがあるかもしれません。
本作の舞台となる60年代はJell-Oがフレーバーを模索していた時代のようで、ブラックベリーにオレンジバナナ、パイナップルグレープフルーツなどの新しい味が続々と登場。
新聞広告やテレビCMも盛んで、ジェロだけを扱ったレシピ本まで出版されていたんだとか。
お湯を加えるだけで作れることもあり、サバービアの奥様たちの間で手軽に見映えのいいデザートが作れると重宝されていたわけですね。
当時はこんなゼリーサラダも流行っていた様子。
めちゃくちゃデコラティブですね。
劇中のデザートにも使われていそうですし、今回のゼリーはJell-Oで作りたいところ。でも残念ながら、Jell-Oって日本ではあまり売っていません。
国産のゼリーミックスだと色も淡めなので、アメリカのお菓子の鮮やかな色合いを出すなら、かき氷シロップを使うのが妥当でしょうか。
水中に棲む「彼」のイメージも取り入れて、深度で見え方の異なる水のようにゼリーの色を変え、層状にするのも良さそう。
銀色のアラザンを散らして水の泡を表現するのもいいかな?
おおよそ完成形が見えてきたので、今回もさっそくはじめていきましょう。
参考:https://www.midcenturymenu.com/the-timeline-of-jell-o-flavors-from-1897-to-1999/
https://www.newspapers.com/search?iid=2249&query=Jell-O&dr_year=1960-1969
ゼリーパフェを作ってみよう
シェイプ・オブ・ウォーター|水底のゼリーパフェ
材料(容量600mlの型1つ分)
- 水面のレモンゼリー用
水_100ml
レモン果汁_大さじ1/2
砂糖_大さじ2
粉ゼラチン_1/2包(約3g程度)
アラザン_小さじ2
- 中層・水底のメロンゼリー用
かき氷シロップ_150ml
水_300ml
レモン果汁_大さじ3
粉ゼラチン_3包(約15g)
ミックスベリー果汁_ティースプーン1/2程度(ゼリーの着色に使用:冷凍ミックスベリー大さじ2を600Wのレンジに1分ほどかけて作る)
- デコレーション用
ホイップクリーム_お好みで
缶詰の真っ赤なチェリー_お好みで
作り方
- 水面のレモンゼリーの準備
- アラザンはお湯小さじ2(分量外)を加えてよく溶かしておく
- 粉ゼラチンは水に振り入れてふやかしておく
- 耐熱容器に水・ゼラチン・砂糖を加え、600Wのレンジに40秒ほどかける(ぐつぐつ沸かさないよう注意)
- 3が溶けたらティースプーン1杯ほどの1とレモン汁を加え、ゼリー液を作る
- バットなどの上に角度をつけてゼリー型を置き、粗熱を取ったゼリー液を注いで冷蔵庫で冷やし固める
- 中層・水底のメロンゼリーの準備
- 粉ゼラチンは水に振り入れてふやかしておく
- 耐熱容器に水とゼラチンを入れ、600Wのレンジに1分ほどかけて加熱する
- ゼラチンが溶けたらかき氷シロップを加え、アラザン液の残りも全て加えゼリー液を作る
- 粗熱を取ったゼリー液のうち200ml分を型に流し、レモンゼリーと反対の方向に角度をつけて冷やし固める
- 残りのゼリー液にミックスベリー果汁を加え、再度冷蔵庫で冷やし固めれば出来上がり。お好みでホイップクリームとチェリーを飾って召し上がれ
ポイント
- ゼリー型がなければ小さめのボウルでも大丈夫。単純な形であるほど型から抜きやすいため、上手く外せるか不安ならボウルで作るのがおすすめです。
- ベリー果汁は入れすぎると色が濁ります。少量ずつ様子を見ながら加えるのがおすすめ。
- ゼリー液を深緑に着色できれば問題ないため、ベリー果汁はブルーベリージャムの上澄みや食紅で代用してもOKです。
- 溶け残り防止として念のためゼラチンはふやかしていますが、ふやかさず使えるタイプのゼラチンなら、そのまま水に振り入れて大丈夫。より簡単に作れます。
食後のヒトコト
レトロなゼリー型で形作り、ホイップクリームとチェリーも飾ると、なんだか不思議な印象のゼリーパフェが出来上がりました。
型取りするため硬めに仕上げたゼリーは、ぷるんとはね返されそうなほどしっかりした弾力。スプーンですくって口に運ぶと、メロンシロップの懐かしい甘さがいっぱいに広がります。
レモンゼリーの透明な水面に鮮やかなメロングリーンの水中、深緑色の水底と、異なる色が重なる様子も幻想的です。
劇中でストリックランドは口をつけていないようでしたが、大きなゼリーパフェは家族で楽しむデザートにぴったり。
層になった見た目も面白いので、休日のデザートとしてお子さんと一緒に作るのもいいかもしれませんね。