今回再現するのは『パイレーツ・オブ・カリビアン』の海賊、キャプテン・バルボッサの食卓にも登場した具沢山サラダ、サルマガンディ。
西インド諸島の海賊たちも愛したという一皿、海賊気分でワイルドに召し上がれ。
海賊たちにも愛された料理・サルマガンディとは
バルボッサとエリザベスのディナーにも登場?!ワイルドなコンビネーションサラダ
Salmagundi(サルマガンディ)とは、肉やシーフード、野菜・果物などを一皿に載せたサラダのような料理。
具沢山のサラダ・ニソワーズや、コブサラダに近い印象というとイメージしやすいでしょうか。
17世紀頃から食べられているこの料理は西インド諸島の海賊たちも好んだようで、最後の大海賊と呼ばれたバーソロミュー・ロバーツ最期の日の朝食がこのサルマガンディだった……という話もあるそう。
劇中ではシリーズ1作目の『呪われた海賊たち』で、バルボッサとヒロイン・エリザベスのディナーにそれと思われる料理が登場しています。
参照:https://www.etymonline.com/word/salmagundi
さて、映画やドラマを鑑賞する際に、どうしても食事シーンに大注目してしまう私。
当然本シリーズでもサルマガンディをはじめ、「海賊たちが食べている料理」に出会えるはずとわくわくしていたのですが、カリブの海賊たちときたら、お酒ばっかり飲んであんまり食事しない……。
アクションが多い作品ですし、食品保存の技術が未発達な18世紀の航海食って悲惨そのもので、だからこそ船乗りは酒ばかり飲んでいたという背景はあるものの、シリーズ作品を通して食事の場面は少なめです。
でも再現料理マニアがっかりなこの作品群において、一人だけ食のシーンが抜きん出て多い登場人物がいます。
それが、先ほどから名前の出ているキャプテン・バルボッサ(ヘクター・バルボッサ)。主人公ジャック・スパロウのライバル的存在として、1作目から登場している粗野かつ紳士なカスピ海の海賊長ですね。
食事に関するシーンがあるのって、正直彼や彼の船におけるシーンくらいかなと思います。
1作目でアステカの金貨の呪いで不死の体となり、代償にどんなに美味しいものを食べても何も感じない……という身体になっていた彼。
呪いが解けた後も食に対する執着は強く残るでしょうから、他の海賊たちより食事シーンが多くても、まあ自然な気はします。
上海ディズニーランドにあるカリブの海賊テーマのレストラン「バルボッサ・バウンティ」がキャプテンの店という設定なのも、このあたりの事情を反映してのことなのかもしれませんね。
材料の考察
シリーズ第4作『生命の泉』で作中舞台が1750年と明確になっているため、今回は1747年発行のベストセラー料理本、Hannah Glasse(ハナー・グラス)の『The art of cookery, made plain and easy』をチェック。
彼女の著作だと「Salamongundy」というのがサルマガンディにあたります。同時代の他の料理本では「Salad-Magundy」と表記されていることもあるようで、まだ呼び名は統一されていなかった様子でしょうか。
ハナー・グラスのレシピによる彼女のサルマガンディは、レタスを敷き詰めた皿の中央にアンチョビとパセリを混ぜた卵サラダを載せ、その周りにキューブ状にカットした鶏肉やレモン、茹でた玉ねぎやいんげん、ぶどう・ナスターチウムの花などを配置した料理とのこと。
味つけはサラダ油に酢と塩こしょうを混ぜたドレッシングなので、ますますコンビネーションサラダ感がありますね。
ただ、字面だと美味しそうに思えるこのレシピ、よくよく読むとさいの目にカットした皮ごとのレモンを1個分加えていたり、アンチョビも卵サラダだけでなくたっぷり配置せよとなっているので食べづらそうだし塩分もすごそう……。
昔のレシピですからこのあたりは臨機応変に調整しつつ、今回もさっそく作っていきましょうか。
サルマガンディを作ってみよう
パイレーツ・オブ・カリビアン|バルボッサ船長に捧げるサルマガンディ
材料(2-3人分)
- いわしのマリネ用
いわしフィレ_8枚(4尾分)
塩_少々
☆レモン果汁_大さじ2
☆酢_大さじ2
☆オリーブオイル_大さじ1
☆ナンプラー_小さじ1
☆オレガノ_2つまみ
☆ローリエ_1枚
☆にんにく_1片
☆輪切りにした鷹の爪_1本分
☆こしょう_少々
- 蒸し鶏用
鶏胸肉_300g
白ワイン_大さじ1
砂糖_小さじ1
塩_小さじ1/4
- ドレッシング用
酢_大さじ1
サラダ油_大さじ2
塩_小さじ1/2
こしょう_適量
- 卵サラダ用
卵_4個
玉ねぎ_1/4個
パセリ_2枝
ケイパー_大さじ1
フレンチドレッシング_大さじ1
塩こしょう_適量
- その他の材料
レタス_3-4枚程度
レモンスライス_5-6枚
茹でたいんげん_お好みで
ぶどう_お好みで
作り方
- いわしのマリネの準備
- いわしは塩を振って5分ほど置き、キッチンペーパーで水気を拭いておく
- フライパンでサラダ油(分量外)を熱し、片面あたり3分ほど中火で焼いて表面に焼き色を付ける
- フリーザーバッグなどに☆の材料と焼いたいわしを入れ、1時間ほど漬ければ出来上がり
- 蒸し鶏の準備
- 鶏肉にフォークでまんべんなく穴を開け、塩と砂糖をすり込む
- フリーザーバッグに肉を入れ、ワインを加えて揉み込み1-2時間ほど漬ける
- 耐熱容器に肉と漬け汁を移してラップなどで蓋をし、500Wのレンジで2分・裏に返してさらに2分ほど加熱する
- 鶏肉に火が通ったら2cm角に切り分けておく
- ドレッシングと卵サラダの準備
- お酢に塩とこしょうを入れて攪拌し、塩が溶けたらサラダ油も加えて混ぜドレッシングを作っておく
- 玉ねぎ・パセリ・ケイパーは細かなみじん切りに、卵は固茹でにして細かく刻んでおく
- 1のドレッシングを振りかけてざっくりと混ぜ、塩こしょうで味を整えれば卵サラダの出来上がり
- 仕上げ
- 皿の中心に卵サラダを置き、そのまわりにレモンスライスに載せたいわしのマリネ・蒸し鶏・レタス・茹でたいんげん・ぶどうなどを配置すれば完成。食べる際にドレッシングをかけて召し上がれ
食後のヒトコト
ハナー・グラスのレシピでは、アンチョビ・パセリを混ぜた卵サラダとなっていましたが、今回のレシピではマリネしたいわしを使ったため、混ぜず卵の周りに配置しています。
そのせいで、いわしが行方不明……。
味が混ざらないようにと卵サラダをガラスの器に入れたせいもありますが、いわしは肉や果物と同じく周りに盛った方がいいかも。より具沢山に見えそうですし。
それにしても、蒸し鶏とぶどうの相性がとてもいいなあ。古い時代を描いた欧米の映画だと果物が肉の丸焼きなどと一緒に盛り付けてあるのを目にしますが、お口直しというより、単純に甘みと酸味が加わって美味しい。
フルーツソースのはじまりは、こんな風に「果物と一緒に食べたら美味しかった」体験が元だったりするのかもしれませんね。
さてさて、体にやさしくアレンジしたサルマガンディ、バルボッサ船長には気に入ってもらえるでしょうか?
粗野で紳士で愛情深い船長を思いつつ、今回もごちそうさまでした。