1832年の1月27日は『不思議の国のアリス』で有名な作家、ルイス・キャロルの生まれた日。
この日にちなんで再現するのは、『不思議の国のアリス』にもキャラクターとして登場する偽ウミガメのスープです。
偽ウミガメのスープとは
仔牛の頭でウミガメを再現?!ヴィクトリア朝のトレンドスープ
数学者・論理学者であるチャールズ・ラトウィッジ・ドジソンが、ルイス・キャロルの作家名で執筆した『Alice’s Adventures in Wonderland(不思議の国のアリス)』。
彼が交流のあった少女、アリス・リデルのために作った物語は1865年にジョン・テニエルの挿画で発表されて以来各国で翻訳され、150年以上も長く親しまれる超ロングセラーとなりました。
さまざまな形で映像化もされており、特にディズニーのアニメーションは有名。
チェシャ猫やマッドハッター、三月うさぎなどがキャラクターとしての知名度を高めたのも、ディズニーアニメあってのことでしょう。
今回再現するのは、そんなアリスの物語に登場するキャラクターのひとり、「偽ウミガメ(ウミガメモドキ)」にちなんだ料理。
この偽ウミガメさん、ディズニー版には登場しないキャラクターですが、テニエル版のイラストで描かれた牛の頭と亀の体が合体したような姿を目にしたことがある方は多いかも。
独創的な姿ですが、造形についてはキャロルやテニエルのまったくの創作という訳でもなく、当時流行していた「偽ウミガメのスープ」がモチーフとなっていた様子です。
18世紀頃からのウミガメスープ人気の高まりで元より数の少なかったアオウミガメが激減し、それを模して仔牛の頭で作った「Mock turtle soup(偽ウミガメのスープ)」が19世紀に入って大流行していたから……という時代背景があったためなんですね。
参考:https://britishfoodhistory.com/2016/08/09/mock-turtle-soup/
材料・調理法の考察
さて、アオウミガメのスープを模した「偽ウミガメのスープ」については、当時ハインツなども商品化して売り出していたほど人気のあったスープ。
さまざまな料理本に登場しており、材料のバリエーションも多様ですが、共通するのはウミガメの代わりとして仔牛の頭を使っているということ。
仔牛の頭の肉・脳みそに香味野菜の類を加えて煮込んで取ったブイヨンに、ひき肉にラードやスエット(牛の腎臓まわりの脂肪のこと)・ベーコンなどの脂を加えて作った「フォースミートボール」と呼ばれる肉団子を添えて食べるのが定番の形のようです。
偽ウミガメのスープ、フォースミートボールについてはどの料理本でもセットで記載していることが多い印象ですが、今回は中でも参考にしやすかったエリザ・アクトンの『Modern Cookery for Private Families』からレシピを参照。
ヴィクトリア朝時代の料理本というと『ビートン夫人の家政読本』が真っ先に挙げられがちなものの、材料の分量を詳細に記したレシピ本らしいレシピ本というと、おそらくはこちらが元祖。
現代のレシピ本のご先祖を参考に、さっそくレシピを組み立ていきましょう。
偽ウミガメのスープを作ってみよう
不思議の国のアリス|偽ウミガメのスープ
材料(3-4人分)
- スープベース用
牛すね肉_300g
玉ねぎ_中1個
セロリ_1/3本
にんじん_1/2本
バター_10g
☆ローリエ_1枚
☆ドライパセリ_小さじ1/2
☆ドライタイム_少々
☆おろしたレモンの皮(オレンジや柚子でもOK)_小さじ1程度
☆塩_小さじ1/2
片栗粉_小さじ1
ブランデーもしくはシェリー酒_大さじ1
こしょう_適量
- フォースミートボール用
ひき肉(牛でも豚でも合い挽きでもお好みで) _100g
薄切りベーコン_2枚(40g程度)
パン粉_2カップ(90g程度)
卵_2個
水_100ml
ドライパセリ_小さじ1/2
ドライマジョラム_小さじ1/4
ドライタイム_少々
ナツメグ_2ふり
こしょう_2ふり
チリペッパー_お好みで
塩_ひとつまみ
- ミートボールの下茹で用
水_適量
白ワイン_大さじ1
塩_ひとつまみ
作り方
- スープの準備
- 牛すね肉は一口大に切り、玉ねぎ・にんじんは1cm程度の角切り、セロリも同じくらいの大きさにカットしておく
- 鍋にバターを引き、牛肉を焼いて表面が濃い褐色になるよう焼き色をつける
- 肉に火が通ったら、玉ねぎ・にんじん・セロリを加えて5分ほど炒める
- 野菜がしんなりしたら、具材がしっかり被るくらいの水を加えて中火にかける
- 沸騰したらアクをすくい、☆の材料を加えて最低2時間以上弱火で煮込めばスープベースの出来上がり
- フォースミートボールの準備
- ベーコンは細かなみじん切りにし、材料を全てボウルに入れてよく練る
- 手にサラダ油をつけ、一口大のボール状に丸めておく
- 塩と白ワインを加えた湯で5分ほど茹で、ミートボールが浮き上がってくれば完成
- 仕上げ
- スープだけを残すよう、ざるなどで具材を取り出しておく(具材も一緒に食べるなら取り出さずそのままで)
- 片栗粉をブランデーで溶いてスープに加え、とろみがつくまで弱火で加熱する
- スープにとろみがついたらミートボールを加え、塩こしょうで味を整えて出来上がり
食後のヒトコト
煮込み時間のかかるスープですが、牛肉や香味野菜、ハーブのうま味と香りでとても贅沢な味。
ミートボールにスープのみを注いでいただくお料理だけれど、上の写真のように具沢山のスープとして食べてもいいですね。
煮込みに使った肉や野菜類もうま味が出きって出がらしになるほどではないので、カレーやシチューなどの具として使うのもアリ。このスープで2食分の献立ができちゃいます。
ちなみにアリスの世界観で食事やお茶を楽しみたいなら、本作をテーマにしたレストラン絵本の国のアリスはおすすめ。
絵本を模した入り口や三月うさぎのお茶会を思わせるメインフロアなど、まさに絵本の世界に迷い込んだよう。アフタヌーンティープランも用意されているため、アリスの世界観でティーパーティーを楽しみたいならぴったりです。
エントランスから一歩中に入れば、店内はまさに不思議の国のよう。幻想的な空間が広がっています。
アリスモチーフのインテリアが可愛らしいだけでなく、イタリアンがベースのお料理も本格的。目でも舌でも楽しめるコンセプトレストランで誕生日や記念日のお祝いをしたいならぜひどうぞ。