1937年の12月21日は、アメリカでディズニー映画『白雪姫』が公開された日。
世界初のフルカラー長編アニメーションが公開された日にちなんで再現するのは、劇中で白雪姫が七人の小人たちのために作ったパイです。
りんご?いちご?白雪姫お手製パイの中身とは
緑がきれいなすぐりの仲間・グースベリーを使った甘いパイ
継母である魔女に城を追われ、森に住む七人の小人たちの家に身を寄せた白雪姫。
助けてくれた彼らのためにと、白雪姫が可愛らしい森の動物たちの助けを借りて作っていたのが、今回再現するパイ菓子です。
白雪姫だからりんごのパイかな? と一瞬思ってしまいますが、パイの中身は「Gooseberry(グースベリー・グーズベリー)」だとのこと。
グースベリーとは写真のように美しい緑色の実をつける果物で、レッドカラントやカシスと同じすぐりの仲間。
台詞からだけでなく、姫がパイを作っているシーンでも薄緑色のグースベリーと思われるフィリングが詰められているのを確認することができます。
日本語版ではグースベリーではなく「いちご」と訳されていますが、どんな果物なのか日本人にはイメージしづらいため、身近なベリー類である「いちご」が訳として選ばれたんでしょうね。
材料・調理法の考察
さて、白雪姫が作るパイの中身がグースベリーだというのは分かったものの、日本語版で「いちご」に変えられた通り、日本ではあまりなじみのない果物。
北海道では「グズベリ」と呼ばれ、旬の8月頃に出回るらしいのですが、冷凍でも全国的には流通していないようです。
なので別の果物でイメージを近づけるなら、彼らが住む森で採れそうな木いちごやブラックベリーなどのベリー類でしょうか。
参考:https://www.nakashibetsu.jp/kyoudokan_web/l10_32.htm
ちなみに本作については16世紀頃のドイツを舞台としているそうですが、この時代って大規模なプランテーションの展開で、砂糖がようやっとヨーロッパ各地に出回りはじめた頃。
蜂蜜もそう採れるものではなかったため同じく貴重で、新鮮な果物に甘みをつけて作るパイはまだまだ珍しかったはずなんですよね。
貴族の館や街中でならともかく、人里から遠そうな小人たちの家に砂糖や蜂蜜があったとは思えない……。
……のですが、ディズニーの白雪姫は世界初の大人向け長編アニメーションの興行を成功させるため、時代考証の正しさよりは、製作された1930年代当時のアメリカで受け入れられやすいことを念頭に置いていたのだとか。
おとぎ話の世界のお菓子ですし、製作当時の背景も考えると親しみのあるいちごやラズベリーなどのベリー類で作るの、そう間違ったことではないように思えます。
というわけで、フィリングに使う果物は現代の日本でも手に入りやすい冷凍のミックスベリーで決まり。
参考:https://www.mitsui-sugar.co.jp/story/oshiete/journey.html
https://www.latimes.com/archives/la-xpm-1993-11-18-fo-57943-story.html
パイ皮についても、今回は冷凍のパイシートを使ってしまおう。生地から作るパイはハードル高いですし。
ただ扱いやすい冷凍のシートとはいっても、使う際に注意しておく点はあります。
ポイントを押さえておかないと膨らまずサクッと仕上がらなかったり、反対に膨らみすぎて不恰好になってしまったり。
以下のポイントを押さえておくと失敗しにくいと思うので、冷凍パイシートを使う際の参考にどうぞ。
- パイシートを解凍する際は常温ではなく、冷蔵庫で解凍する
- 作業の直前まで冷蔵庫に入れておき、冷えた状態を保つ
- 膨らみすぎを防ぐため、生地には焼く前にフォークなどで空気穴を開けておく
- 水分の多いフィリングを詰める場合、底生地はあらかじめ空焼きしておく
ベリーのパイを作ってみよう
白雪姫|白雪姫お手製のベリーパイ
材料(18CMのタルト型1つ分)
- フィリング用
冷凍ミックスベリー 250g
砂糖 大さじ4
片栗粉 大さじ1
- パイ生地用
冷凍パイシート 4枚(10×18cmサイズの角型タイプの場合)
卵 1個分
牛乳 小さじ2
塩 ひとつまみ程度
作り方
- 下準備
- パイシートは冷蔵庫に半日ほど置いて解凍しておく
- 冷凍ベリーは砂糖大さじ1杯分をまぶし、冷蔵庫に半日ほど置いて解凍しておく
- 卵・牛乳・塩をよく攪拌し、茶こしなどで濾して艶出し用の卵液を作っておく
- フィリングの準備
- 解凍したベリーの水気を切り、砂糖の残りと片栗粉を加えて混ぜておく
- パイ生地の準備
- オーブンは200℃で予熱しておく
- パイシート2枚をつなぎ合わせてめん棒で伸ばしタルト型に載せ、型の底や側面に押しつけて生地を敷き詰める
- 型の上からめん棒を転がし余分な生地をカットし、フォークでまんべんなく空気穴を開けておく
- 3に重し(タルトストーンもしくは、小さめの耐熱皿などでも)を載せ、オーブンの中段で20分ほど空焼きする
- 残りのパイシートをめん棒で軽く伸ばしてフォークで全体に空気穴を開け、クッキー型などで好きな形に抜いておく
- 仕上げ
- 生地にフィリングを入れてクッキー型で抜いたパイシートを載せ卵液を塗り、オーブンの中段で200℃・15分ほど焼く
- オーブンの温度を180℃に下げ、さらに20-30分ほど焼けば(焼き色が濃くつきそうなら途中でホイルを被せる)出来上がり
- 1時間ほど置いて粗熱を取り、お好みでパウダーシュガーなどを振りかけて召し上がれ
ポイント
- パイシートとミックスベリーの解凍準備は前日のうちに済ませておくとスムーズ。
- パイシートは焼くと歪みが出るため、型抜きに使うクッキー型は丸や星・ハートなどの単純な形がおすすめです。
食後のヒトコト
美味しいお菓子は季節を問わず素敵ですが、冬の寒い時期に作る焼き菓子は特別感がありますね。
パイの焼ける甘く香ばしい香りがキッチン中に広がって、なんだかわくわくしてしまう。
なお水気多めのフィリングで崩れやすいため、焼きたての状態で切り分けるのはおすすめできませんが、このパイは温かくしていただくとベリーの香りがより引き立ちます。
1ピースにつき、600Wのレンジで30-40秒ほど温めると香りと酸味が際立ち、格別の味わいになるのでぜひお試しを。
毒りんごを姫に食べさせたい魔女は劇中で、「男性はベリーのパイよりもアップルパイが好きなもの」なのだと宣うのですが、ベリーのパイもなかなか……。
それにしても魔女の台詞に時代を感じるなあと思いつつ、今回もごちそうさまでした。