ヴィクトリア朝時代のイギリスにはかつて、現代の私たちにもおなじみのウスターソースと人気を二分する「Reading sauce(レディングソース)」なる調味料がありました。
未熟な青いクルミを漬け込んだ珍味「クルミのピクルス」をベースに作られるこちらは魚料理によく合ったようで、一時期は偽物まで出回るほどの人気だったとか。

ただ、ウスターソースについては定番の調味料として日本の食卓にも欠かせない存在になっていますが、レディングソースの方はもはや幻。今は製造するメーカーもなく、レシピを検索してもヒットするのはほんの数件です。
かつてはウスターソースと人気を争ったほどだというのに何故これだけの差がついたのかは定かではありませんが、トレンドの調味料として一世を風靡していたのは事実。

同時代の作家であるジュール・ヴェルヌの小説『八十日間世界一周』には主人公の英国紳士、フィニアス・フォッグがレディングソースをかけた魚のグリルで朝食をとるシーンが登場しますし、当時の大ヒット家事指南&レシピ本『Mrs Beeton's Book of Household Management(ビートン夫人の家政読本)』ではその作り方が紹介されていたりします。
今回作るのは、そんなヴィクトリア朝時代のトレンド調味料だったレディングソースをヒントにしたもの。
手に入らない材料は色々とありますし、熟成の時間も最低限なのでほんの少し雰囲気を感じられるかな……? という程度ではありますが、コクのあるクルミにネギやしょうがなど薬味野菜もたっぷりのソースは奥深くあと引くお味です。
白身魚のソテーやムニエル、またチキンステーキなどのソースにするのはもちろん、蒸し野菜とも好相性。かけるだけでぐっと味を引き締めてくれますので、ぜひお試しあれ。
参考:https://www.getreading.co.uk/news/berkshire-history/top-secret-reading-sauce-recipe-22341711
https://www.gutenberg.org/cache/epub/10136/pg10136.html