ティム・バートン監督の名作ファンタジー『シザーハンズ』から、主人公の「ハサミ男」エドワードが食べさせられていたアンブロシアを再現。
マシュマロを加えてふわふわにした甘いクリームに、果物やココナッツがたっぷり入ったフルーツサラダは古き良きアメリカの雰囲気いっぱい。お休みの日のおやつにも、劇中のようにホームパーティー用のメニューにするのもおすすめです。
ハサミ男・エドワードが食べさせられていたピンクのクリームは一体なに?
ポットラックメニューの定番!フルーツとクリームたっぷりのアンブロシア・サラダ
今回再現するアンブロシア・サラダが登場するのは、ハサミの両手という不完全な姿のまま孤独に生きてきた主人公・エドワードが優しく温和な化粧品のセールスレディ・ペグの家に連れられてきて間もなくのバーベキュー&ポットラックパーティーでのこと。
ポットラック(持ち寄り)スタイルで開かれたパーティーでは、ご近所の奥様たちがそれぞれ自慢の手料理を持参。そのうちの一人であるお色気奥様・ジョイスが彼に食べさせていたのがアンブロシアだったんですよね。
ふわふわしたピンクのクリームをうず高く盛ったボウルにチェリーをトッピングしたそれは、作ったジョイスのキャラクターをそのまま反映したよう。
いかにもねっとりと甘ったるそうなクリームの味が、画面からも伝わってきそうなビジュアルもなかなか強烈でした。
材料・調理法の考察
日本では馴染みがないせいか、吹き替え版では「ジョイス風悩殺サラダ」なんてネーミングで呼ばれていましたが、アンブロシア自体は昔ながらのよそゆきデザートサラダとして、現在でも南部を中心に親しまれている料理。
オレンジに桃やパイナップルなどのフルーツとココナッツフレーク、そしてマシュマロや生クリーム・ヨーグルト等の材料を混ぜて砂糖漬けのチェリーを飾った懐かしい雰囲気のファンシーなデザート……というのが、おそらく現在のアンブロシアの一般的な印象ではないかなと思います。
さて、カラフルなフルーツやマシュマロを混ぜたポップな見た目から、いかにも50-60年代頃のサバービア(郊外の一戸建てが集まる住宅地)の奥様方の間で流行ったもののように思えるアンブロシア・サラダですが、誕生はそれよりずっと古く、なんと19世紀頃まで遡ることができたりします。
ただ発祥自体は今から150年以上前と古いものの、当時のアンブロシアは現在よく知られているポップなそれとは違い、かなりシンプル。
1867年出版の『Dixie cookery; or, How I managed my table for twelve years.』にもあるように、すりおろして甘くしたココナッツとオレンジの果肉を層状に重ねただけ……という、ごくごく単純なものだったようです。
甘み付けの砂糖の他には何も使わないため現代の私たちから見ると簡素にも思えてしまいますが、オレンジの商業栽培が始まり、鉄道網が徐々に拡大していった19世紀のアメリカでは、オレンジもココナッツも珍しく貴重な食材。
特に何も手を加えなくても、オレンジとココナッツを使っているだけで話題性抜群! 流行のデザートとして存在感があったのでしょうね。
やがて時が経ち、マシュマロやクリームやらがどっさり入ってもはや別の食べ物と言っても差し支えない姿になってもオレンジとココナッツフレークは健在。
このデザートに入れる定番の具材として受け継がれているのには、なんだか感慨深さすら覚えますね。
そんな意外と歴史のあるアンブロシア。劇中のジョイスお手製のものは当然のようにかなりポップなバージョンで、てっぺんにチェリーを乗せたピンクのねっとりクリーミーな塊……といった感じ。
ジョイスさんバージョンに寄せてピンク色を出すならフードカラーを使うのが簡単だけれど、アンブロシアにはイチゴやラズベリーなどのベリー類が入るのも珍しくないのでここはちょっと健康的(?)に冷凍ベリーの果汁でピンクカラーを加えましょう。
あとはアンブロシアの典型的な食材、缶詰のフルーツとココナッツフレーク・マシュマロを入れ、生クリームとヨーグルトを合わせたクリームで和えるとかなりそれっぽくなりそう。
さくっと決まったので、今回もさっそくスタートです。
参考:https://dos.myflorida.com/historical/museums/historical-museums/united-connections/foodways/food-cultivation-and-economies/the-citrus-industry-in-florida/
アンブロシアサラダを作ってみよう
シザーハンズ|サバービアの奥様的アンブロシア・サラダ
材料(3-4人分)
生クリーム_1/2カップ
水切りヨーグルトもしくは無糖のギリシャヨーグルト_1/2カップ(甘いのがお好みなら加糖タイプを使ってもOK)
フルーツの缶詰_100g(みかんや黄桃などお好きなものを)
冷凍のベリー_50g
マシュマロ_60g
ココナッツフレーク_50g
- トッピング用
缶詰のチェリー_お好みで
作り方
- マシュマロは1cm角程度にカット。缶詰のフルーツも水気を切り、同じくらいの大きさに切っておく
- ボウルで生クリームをツノが立つほどしっかり泡だて、水切りヨーグルトと合わせておく
- マシュマロ・フルーツ・ココナッツフレークを加えて混ぜ、冷蔵庫に最低2時間ほど置いて冷やす
- マシュマロがクリームやヨーグルトの水分を吸い、ふわっと柔らかくなれば出来上がり。食べる直前に冷凍ベリーを混ぜ、チェリーを飾って召し上がれ!
ポイント
- 水分が出てしまうため、冷凍ベリーを混ぜたら作り置きせず食べ切ってしまうのがおすすめです。
食後のヒトコト
マシュマロを加えてふんわりなめらかに仕上がったクリームは口溶けがよく、甘酸っぱい果物とマッチ。香ばしくサクサクしたココナッツの風味と食感もアクセントになって、飽きがこない美味しさです。
エドワードはジョイスに半ば無理やり食べさせられていたけれど、さっぱりしているのでぱくぱく食べられちゃいそう。ホームメイドのデザートとして長く親しまれてきたのも納得ですね。
基本的に混ぜるだけと調理も簡単なので、お子さんと一緒に作るのにも良さそう。フルーツの種類を変えたり、色付きのマシュマロでジョイスのようにカラフルなクリームにしてみてもいいですね。
大きなボウルにたっぷり作ればレトロなアメリカを感じられるデザートに仕上がるので、休日のおやつやホームパーティーのメニューにもおすすめですよ。