才能溢れる小さなネズミのシェフが活躍する物語『レミーのおいしいレストラン』から同作を代表する料理、ラタトゥイユを再現。本格的に作ろうとすると手間も時間もかかるお料理ですが、今回はそれをなるべく簡単に。
ディズニーパークのレシピも参考に、美しく盛り付けられたレストラン仕様のラタトゥイユを手軽に作れるようアレンジしています。
一人分ずつ小さめに作るため、失敗しにくいのもポイント。キャセロールや大きなグラタン皿がなくても大丈夫ですよ!
普通のラタトゥイユとはちょっぴり違う?レミーのお料理とは
有名シェフによるラタトゥイユのアップデート版「コンフィ・ビヤルディ」
「Ratatouille(ラタトゥイユ/ラタトゥーユ)」は本作『レミーのおいしいレストラン』の原題であり、物語のキーアイテムともなっているお料理です。
物語のクライマックスでリトル・シェフ(=ねずみのレミー)が考案し、気難しい料理評論家のイーゴに出されたそれは、ズッキーニやなすなどのスライスを美しく重ねた野菜のオーブン焼き。
エレガントながら家庭料理のラタトゥイユの雰囲気も感じる一皿で、厳しい批評で知られるイーゴも一口で少年の頃に引き戻され、思わず笑顔になってしまうほど。
心の奥底に眠っていた家族や故郷への想いを優しく揺さぶって引き出す、あたたかな味わいの料理として描かれていました。
ところで劇中でレミーが考案したラタトゥイユは、伝統的ないわゆるラタトゥイユとは少し違います。
もちろん、高級レストラン仕様の美しい盛り付けだから違って見える……というのもありますが、レミーのお料理の元ネタはそもそも「コンフィ・ビヤルディ」なるラタトゥイユのアップデート版的なもの。
ヌーベルキュイジーヌの創始者として知られるフレンチの大家、ミシェル・ゲラールが考案し、本作をはじめ、多くの映画作品で料理監修を務めてきたセレブリティシェフ、トーマス・ケラーの手によって仕上げられた、ラタトゥイユのアレンジ料理だったりするんですね。
レミーはシェーブルチーズの味が分かり、煙による燻味やイタリア産サフランの香りを理解して自分の料理に落とし込める天才シェフねずみくん。
元ネタのお料理が、名だたる巨匠たちによって編み出されたものだというのも何だか納得できる話です。
参考:https://www.tasteatlas.com/confit-byaldi
材料・調理法の考察
そんなラタトゥイユとコンフィ・ビヤルディの主な材料についてはズッキーニやなす、トマトなどでそれほど変わらないものの、カットした野菜を鍋で炒めて煮込むラタトゥイユに対し、コンフィ・ビヤルディは基本的に野菜を炒めず煮込まず、オーブンで焼き上げて作るところが大きく異なります。
スライスした野菜をオーブンで焼くだけなので普通のラタトゥイユより手軽か、というとその逆で……
- ソースパンでパプリカやトマトなどの野菜を炒め、ピペラードソースを作っておく
- スライサーでズッキーニ・なす・トマトを薄くスライスし、交互に重ねていくつかの組を作っておく
- キャセロールに薄くピペラードを敷き、野菜をアコーディオン状に並べて低温のオーブンでじっくり焼く
- ピペラードをベースにビネグレットソースを作る
- 焼き上がったらキャセロールから野菜を一人分すくい取り、皿に盛り付けビネグレットをかけてサーブする
というように、それなりに手順が多く時間もかかります。
ラタトゥイユはもともと「野菜の粗煮・ごった煮」を意味する素朴な料理ですが、これだけ手間のかかった一品に昇華させているなら、洗練されたレストランのメニューとして出てきてもおかしくはないですよね。
ただこの手間のかかり方、正直家庭向きじゃない。
コンフィ・ビヤルディ方式のラタトゥイユについては、映画の公開前からさまざまなレシピがネットなどで公開されていますが、その多くがキャセロールや大きめのグラタン皿に並べて焼く大皿料理なのも、そのままで十分美しいからな訳で。
大皿のままで十分美しく見映えのするお料理を、わざわざ一人分お皿に取って改めて盛り付け直すって、まあ家庭の食卓だとまずしないでしょうからね……。
とはいえ、せっかく小さな天才シェフのお料理を再現するのですから、形にはぜひともこだわりたいところ。
そこで今回は劇中のシーンに登場するラタトゥイユの盛り付けを、より簡単にするアイデアを考えます。
ヒントとなるのは、2021年にディズニー・パークの公式TikTokアカウントが公開した、パーク内レストランのレシピ。
こちらで紹介されているのはキャセロールなどで大きく焼くのではなく、最初から小さな型に野菜を詰め、一人分を焼き上げるという方法です。
動画ではオーブンで焼き上げた後、型をひっくり返してお皿に盛り付けていましたが、セルクルやシリコンのパンケーキ型などを使えばディナープレートにスライドし、置くだけでさまになりそう。
そのままテーブルに出せるココットに詰めればその手間さえいらず、さらに簡単。
大きな器に詰めるより野菜もズレにくく扱いやすいので、不器用さんも、お母さん・お父さんと一緒に作りたいお子さんもチャレンジしやすいはず……。
今回も方針が固まったので、さっそく作っていきましょう。
参考:https://dictionnaire.lerobert.com/definition/ratatouille
レミーのラタトゥイユを作ってみよう
リトルシェフのラタトゥイユ、もしくはコンフィ・ビヤルディ
ココット皿のような小さめの耐熱容器、もしくはセルクル型などが必要です
材料(φ10cm程度の型約4個分)
- ピペラードソース用
パプリカ_1/2個
玉ねぎ_1/4個
にんにく_1片
トマトピューレ_1/4缶
オリーブオイル_大さじ1
ローリエ_1枚
タイム_2つまみ(あれば)
塩_ひとつまみ
こしょう_適量
- ラタトゥイユの具材用
ズッキーニ_1本
なす_1-2本
ミディトマト_6個(普通のトマトでも代用可)
オリーブオイル_ココット1つにつき小さじ1程度
- ビネグレットソース用
ピペラードソース_大さじ1
オリーブオイル_大さじ1
白バルサミコ酢もしくはお酢_小さじ1
塩こしょう_適量
刻んだパセリやあさつき、フレッシュハーブなど_お好みで
作り方
- ピペラードソースの準備
- パプリカ・玉ねぎ・にんにくは細かく刻んでおく
- ソースパンなどでオリーブオイルを温め、パプリカ・玉ねぎ・にんにくを中火で炒める
- トマトピューレ・ローリエ・タイム・塩を加えて弱火に落とし、10分ほど煮詰めてこしょうを振ればソースの出来上がり
- ビネグレットソースの準備
- 小さなボウルなどにビネグレットソースの材料を全て加え、混ぜ合わせてソースにしておく
- ラタトゥイユの準備
- オーブンは150℃で予熱しておく
- ズッキーニ・なす・トマトはスライサーなどで厚さ2mm程度の輪切りにし、順に重ねていくつかの組を作っておく
- 型にピペラードソースを薄めに敷き、組にした野菜を詰めてオリーブオイルを回しかける(底が無いセルクルのような型を使うなら、オーブンペーパーを天板に敷く必要あり)
- アルミホイルで蓋をし、オーブンの下段にセットして20分ほど焼く
- 天板を上の段に移し、ホイルを外してさらに15分ほど加熱して焼き色がつけば完成。お好みでビネグレットソースをかけて召し上がれ
ポイント
- ミディトマトが無ければ、薄めの半月切りかいちょう切りにしたトマトを使っても大丈夫。なすとズッキーニの間に挟み込めば形を整えられます。
食後のヒトコト
コンフィ・ビヤルディは低温でじっくり焼く料理のため、焼き上がりまでに1〜2時間ほどかかることも珍しくないのですが、小さな型で作ると短い時間で仕上げられますね。
型に美しく詰めた野菜は崩さず、そのままディナープレートにスライドさせればいいだけなので、盛り付けも楽々。ココット型ならお皿に乗せるだけですから、さらに簡単です。
ぎゅぎゅっと野菜の甘みやうま味が凝縮したラタトゥイユは冷めても美味しいため、作っておけばさっと出せるのもいいところ。
普通のラタトゥイユより手間はかかりますが、まさに誰でも名シェフ! な一品が作れます。レミーのように果敢に美味しさに挑戦したいなら、一度試す価値ありですよ。