今回再現するのは伝説的なロックスター、フレディ・マーキュリーの生涯を描いた映画『ボヘミアン・ラプソディ』に登場するお菓子。
劇中でほんの一瞬登場するだけですが、フレディのお母さんが手作りしていたお菓子からは、ゾロアスター教徒である彼らのルーツもちらりと垣間見えたりします。さてさて、果たしてどんなお菓子なのでしょうか?
家族との絆も感じさせるママの手作りお菓子とは
色とりどりの手作りインドスイーツ・ミタイ
今回再現するお菓子が登場するのは、物語も終盤に近づいた頃。フレディが20世紀最大のチャリティーコンサートであるライヴ・エイドへの出演を決意し、ライヴ直前にボーイフレンドのジム・ハットンを伴って実家を訪れる……というシーンでのことです。
彼らを迎えたフレディのパパが、「妻手作りのミタイ(Mithai)をどうぞ」と勧めていた色とりどりのお菓子がそれですね。
ママお手製の美味しそうなお菓子はさらっと一瞬映るのみですが、手作りのお菓子を前に家族や大切な人と囲むお茶のテーブルは、とても温かく穏やかな雰囲気。
ソロ活動で成功したものの、長らく「道を見失っていた」フレディと家族との間の道がまた繋がったことを確かに感じさせる、静かな力強さが漂っていたのが印象的でした。
材料の考察
さて、そんなシーンに登場した「ミタイ」はフレディのママのように手作りすることもあれば、お店で売られているものを買うのも珍しくないお菓子です。
「世界一甘いお菓子」なんて呼ばれるシロップ漬けの揚げ菓子「グラブジャムン」や、ミルクにドライフルーツやナッツを加えたアイスクリームのような「クルフィ」などが有名ですが、ミタイはそもそも和菓子や洋菓子のようなお菓子の総称であるため、その種類は実にさまざま。
せっかく再現するなら、パールシー(ゾロアスター教徒)であるフレディたちバルサラ一家ならではのミタイを作ってみたいものですよね。
そこで何かパールシーらしい特徴がないかと、目を皿のようにしてママのミタイをじっくり眺めてみると、一つ目を引くお菓子を発見。
淡い黄緑色っぽいカラーの、弾力がありそうな小さなお菓子。イランでよく食べられている「マスガティ」と呼ばれる種類のお菓子のようです。
でんぷんに砂糖やローズウォーターなどを混ぜ、炊き上げて作ったお餅のような、ういろうのようなそれは、イランの代表的なスイーツのひとつ。
パールシーは古代ペルシャ(現在のイラン)にルーツを持つ人々ですし、劇中に登場するそれの見た目もごく一般的なマスガティと思われるタイプなので、これは確定で良さそう。
となれば、あとは材料を揃えるだけ。一般的なマスガティを作る際に必要なのはネシャステ(片栗粉)に砂糖、ローズウォーター・サフラン・カルダモン、それにピスタチオやアーモンドなどですから、さっそく用意して作っていきましょう。
マスガティを作ってみよう
ボヘミアン・ラプソディ|ママの手作りマスガティ
材料(4人分)
片栗粉_100g
砂糖_100g
バター_30g
水_4カップ
ローズウォーター_1/2カップ程度
ピスタチオとアーモンド(軽くローストしておく)_30g
カルダモン_2-3振り
サフラン_ひとつまみ(大さじ2杯分の水に20分ほど浸しておく)
- トッピング用
ピスタチオ_お好みで
バラの花びら_お好みで
作り方
- ピスタチオとアーモンドは細かく刻んでおく
- 小鍋などに片栗粉と砂糖・水1カップ分を加え、よく混ぜておく
- 鍋を弱火にかけ、残りの水を少しずつ加えながら加熱する(ダマを防ぐため、加熱中は泡立て器などで絶えずかき混ぜ続けること)
- とろみが出て固まってきたらバターとサフラン水を加え、鍋底からすくって練り上げつつ、さらに5分ほど加熱する
- ローズウォーターとカルダモン・ピスタチオを加えて全体をざっくり混ぜ合わせる
- 水で濡らした型に流し込んでトッピングのピスタチオとばらの花を散らし、冷蔵庫で冷やし固める
- 1-2時間ほどして固まったら、好みの形に切り出して出来上がり
食後のヒトコト
ひんやり冷えて固まったマスガティを口に運んでみると、柔らかで弾力のある食感はまさに餅といったところ。ただ餅菓子系ではあるものの、ほんのりバラとサフランが香るため、なんだか不思議でエキゾチックな味わいです。
今回のマスガティはダマスクローズの産地として有名なイランのお菓子ということで、現地でよく見られるバラの花びらトッピングで仕上げていますが、無い方が正直口当たりはいいかも……。
劇中のフレディママのマスガティはトッピングなしのプレーンなタイプでしたし、ローズウォーターだけでも十分雰囲気は出ますから、トッピングはお好みに合わせて加減するといいかもしれません。
なお、マスガティはイランのスイーツなので取り扱いがあるかは不明ですが、他の「ミタイ」も味わってみたいなら、西葛西にあるインドスイーツの専門店「トウキョウミタイワラ」をチェックしてみるのもおすすめ。
本場の職人による本格的なミタイがこんなに豊富に揃うのは、日本だとおそらくここだけでしょう。
ミタイの種類は季節などによっても異なるようですが、中にはフレディが家族と食べていたものもあるはず。ミタイを口にしつつ彼の残した音楽に浸りつつすれば、より深く自由に味わえそうですよ。