パラレルワールドのヴィクトリア朝時代を舞台に耽美なキャラクターが暗躍し、謎に満ちた世界観が繰り広げられるダークファンタジー『黒執事』。
今回はそんな『黒執事』に登場する料理から、執事のセバスチャンが作るポーチドサーモンの朝食を再現します。名門貴族ファントムハイヴ家の朝食、皆様もぜひご堪能あれ。
執事のセバスチャンが用意したある日の食事とは
ファントムハイヴ家の当主に用意された「ポーチドサーモン」メインの朝食
ファントムハイヴ伯爵家の完璧執事・セバスチャンが主人であるシエル坊ちゃんに用意したのは、ポーチドサーモンにミントサラダ、スコーンからなる朝食。
『黒執事』にはセバスチャンによる数々の美しい料理が登場しますが、原作第一巻の冒頭で登場したこのポーチドサーモンについては、アニメ版でもシーズン1・2の初回に登場していたため、印象に残っている人も少なくないのではないかと思います。
豪奢な寝室に用意されたアーリーモーニングティー(目覚めの紅茶)の設えや、朝食のテーブルに美しく盛り付けられた料理の数々。そして給仕するのは燕尾服のお仕着せに身を包んだ長身の執事……。
原作でもほんの数カットの情景描写ではありますが、英国貴族の朝の風景を存分に感じさせ、物語への期待感を高めてくれる素敵なシーンでした。
材料・調理法の考察
さて、名門貴族らしさ満点の朝食で登場する「ポーチドサーモン」は、ハーブなどで香りをつけたお湯でサーモンを軽く茹でたもの。
香草類を使っても焼いたり揚げたりするのに比べて生臭さが出やすいため、新鮮な魚でないと成立しない料理です。
ファントムハイヴ家においてはどんなに海や川から離れていてもセバスチャンが新鮮な魚を獲ってきそうですが、『黒執事』がベースとしているヴィクトリア朝時代後期においても鉄道網の整備が進んだため、食品の輸送にかかる時間は格段に短くなっています。
冷蔵や冷凍の技術は登場していなくても、新鮮な肉や魚は手に入りやすくなっていたはず。
そこで茹で調理の魚料理もあるかなと当時の料理本をいくつか調べてみましたが、「ポーチドエッグ」「グリルドサーモン」はよく登場するものの、「ポーチドサーモン」の名前はなし。
蒸気機関の利用で輸送が早くなったとはいえ、「さっと茹でただけで美味しい」レベルの魚に行きあたるのは難しかったのでしょうか。
ただ、ばっちり「ポーチドサーモン」に該当する料理はありませんでしたが、近いものは見つけることができました。
『The cook's guide and housekeeper's & butler's assistant (家政婦・執事に向けた料理の手引き)』で紹介されている「BOILED SALMON AFTER THE SCOTCH FASHION(スコットランド風ボイルドサーモン)」という料理です。
「釣りたてに近い新鮮なサケやマスが手に入った場合に推奨」で、茹でたサーモンにバターソースやダッチソース(オランデーズソース)をかけていただく一皿とのこと。
内容的に近いだけでなく、家政婦・執事向けの料理本に掲載されているというのも今回のテーマにぴったりですね。
こちらの本にはロメインレタスとミントを使った「ENGLISH SALAD」のレシピも紹介されているため、合わせて参考にしたいところ。
生のミント類はそのままだと刺激も強いし苦手な人も多いので、一工夫必要かな?
例によって昔のレシピは調整が必要ですが、もろもろ出揃ったので、今回も進めていきましょう。
ポーチドサーモンを作ってみよう
黒執事|若き伯爵のためのポーチドサーモン
材料(2人分)
- ポーチドサーモン用
サーモンフィレ_2枚(400g程度・刺身用がベスト)
長ネギの葉身(緑色の部分)_1本分
レモン_1/2個
パセリ_2枝
ドライディル_小さじ1/2(フレッシュなら1-2枝程度)
白ワイン_大さじ2
塩こしょう_適量
- ダッチソース(オランデーズソース)用
卵黄_1個分
バター_20g
生クリーム_大さじ2
レモンジュース_小さじ1/2
塩_ひとつまみ
こしょう_適量
ナツメグ_ひとふり
- ミントサラダ用
ロメインレタス_6-7枚
ミントの葉_5-6芯(5g程度)
酢_大さじ1
サラダ油_大さじ1
☆砂糖_小さじ1/2
☆塩_ひとつまみ
☆こしょう_適量
- その他
スコーンもしくはカンパーニュやトースト_お好みで
作り方
- ミントサラダの準備
- ロメインレタスは5mm幅程度の細切りにし、ミントの葉は細かく刻んでおく
- 酢に☆の調味料を溶かし、ミントの葉・サラダ油も加えて攪拌。ドレッシングを作っておく
- ポーチドサーモンの準備
- ディルはお茶パックなどに入れておき、レモンは薄めの輪切り、長ネギは縦切りにしておく
- 浅めの鍋もしくはフライパンに水を張り、長ネギ・パセリ・ディル・レモンスライス(3-4枚は飾り用に残しておく)を入れて15分ほど中火で加熱する
- 香りが出てきたら一旦火を止めて白ワインを加え、軽く塩こしょうをしたサーモンを香草類の上に載せるように置く
- 絶対に沸騰させないよう注意しつつ、蓋をして弱火で6-7分ほど茹でれば出来上がり
- ダッチソース(オランデーズソース)の準備
- 耐熱容器に卵黄・レモンジュースを入れ、泡立て器でよく混ぜておく
- 別の耐熱容器にバターとクリームを入れ、500Wのレンジに40秒ほどかけてバター液を作る
- 1にバター液を少しずつ加えながら泡立て器で攪拌し、500Wの電子レンジに30秒ほどかける
- すぐに取り出して再度よくかき混ぜ、とろみがついたら塩こしょう・ナツメグを入れ味を整えて完成
- 仕上げ
- 皿にソースを敷いてサーモンを盛り付け、ドレッシングを和えたミントサラダを添えれば出来上がり。スコーンやカンパーニュと一緒に召し上がれ
ポイント
- 刺身用のサーモンで作るなら、好みに応じて加熱時間を短くするのもアリ。外側ふわり、中はレアの状態で仕上がります。
- オランデーズソースにはクリームの代わりに牛乳を使っても。あっさり軽く仕上がります。
食後のヒトコト
茹でたサーモンの身はふわりと柔らかく、ナイフがすっと入ります。
クリームを加えたオランデーズソースも、コクがありながら軽い味わい。しつこくないので目覚めたばかりの胃にも優しそうです。
ロメインレタスのサラダも爽やか。ミントは刻んでドレッシングに加えているため特有の刺激が前に出ず、食べやすく仕上がりました。
朝食のメニューとは思えない華やかさを演出できますが、サーモンの調理自体はハーブを入れたお湯で茹でるだけとごく簡単。
時間のある休日の朝食に作って、英国貴族気分を味わうのもいいかもしれません。
原作に登場したロイヤル・ドルトンの茶葉は残念ながら通販でも手に入れることはできなくなってしまいましたが、ヴィクトリア朝時代の上流階級御用達の紅茶舗といえば、F&M(フォートナム&メイソン)やハロッズも定番。
紅茶も当時の上流層に好まれていたメーカーのもので揃えれば、いっそう優雅なひとときを過ごせそうですね。