今回は、ドラマ版『ハンニバル』のシーズン1・第2話に登場するレクター博士の手料理を再現。
劇中の肉料理の正体は「……」な感じですが、再現で使うのはもちろん普通のお肉なのでご安心を!
第2話「Amuse-Bouche(アミューズ・ブーシュ)」で登場した一皿
レクター博士が作る豚肉(?)の料理
ドラマの第2話「Amuse-Bouche(アミューズ・ブーシュ)」で登場した一皿は、レクター博士によると「ロイン、ベリーのカンバーランドソース添え」とのこと。
ローストした肉にたっぷりのベリー系ソース、数種のキノコといんげんが添えられたお料理でした。
ドラマシリーズに登場する料理については本作のフードスタイリスト、ジャニス・プーンの手によるもの。
氏のブログでは上記のような料理のスケッチや、レシピなども見ることができますよ。
なお、作中で博士はメインディッシュの肉について、豚のロイン(ロース)を使っていると説明していましたが、氏によるとドラマのシーンに登場させた料理には仔牛肉を採用したとの話。
この理由が「人の肉と似た味だから」というものなので、まあ後は言わずもがなですね……。
材料・調理法の考察
さて今回の料理、メインである肉の種類はさることながら、お皿の中で特に目を引くのが赤くなみなみと添えられたカンバーランドソースでしょう。
カンバーランドソースとはベリーに柑橘類で風味を付け、赤ワインで煮たソースのこと。
赤身肉に合わせてよく食されるこちらにはさまざまな作り方が存在しますが、木イチゴなどのベリーにオレンジやレモン、ポートワインもしくはクラレットが入るというのが一般的です。
劇中の肉料理については前述のブログでレシピが紹介されているため、ソースの材料はそちらで確認。
欧米のレシピでよく見るカンバーランドソースについてはレッドカラント(赤スグリ)やクランベリーを使ったものが多い印象ですが、レクター博士のソースはラズベリーがメインなんですね。
博士の好みに合わせてリアルな血の色をしたソースを作るなら、紫がかったラズベリーの色味はたしかに最適かも。
冷凍で手に入りやすいベリーでもあるので、ソースのベースはラズベリーで決定です。
もう一つのポイントは、付け合わせとして添えられたキノコ。
日本では普段の食卓でもごく普通にキノコを使いますが、アメリカにはキノコを食べる文化があまりありません。
国内ではありふれた種類も大都市やアジア系のスーパーでないと手に入らないため、お皿に添えられたキノコはレクター博士自ら摘んできたものだそう。
博士の博識ぶりはここでも発揮されるんですね。さすがだ……。
彼は自分でキノコを調達していましたが、しいたけ・しめじ・まいたけ・エリンギ・えのき・なめこなど、正直どれでも気分は出ると思います。
見た目からするとしめじが一番近いので、素直にしめじ採用ですね。白ワインをちょっと振り、ごく軽くレンジ蒸しにして添えるのがいいかな。
最後はお肉について。こちらはレシピだと、仔牛の肉にマッシュルームとほうれん草のスタッフィングを詰めローストしたものと紹介されています。
でも博士によれば、肉はあくまで「豚ロース」とのこと。
博士がそうおっしゃるのならば「豚」なのでしょう。ええそうなのでしょう。彼の言葉に従い、豚ロースのブロックを使うということで。
もろもろ出揃ったので、今回もさっそくスタートです。
ロイン、ベリーのカンバーランドソース添えを作ってみよう
ハンニバル(ドラマ版)|ロイン、ベリーのカンバーランドソース添え
材料
- ローストロイン用
豚ロースブロック 400-500g程度
豚薄切り肉 5-6枚程度
塩こしょう 適量
- フィリング用
ほうれん草 1/2束
マッシュルーム 3-4個分
にんにく 1/2片
バター 30g
パン粉 大さじ1
粗挽き黒こしょう 適量
塩 適量
- カンバーランドソース用
冷凍ラズベリー 100g
冷凍レッドカラント 大さじ2
オレンジ果汁 1個分
(100%オレンジジュースなら1/2カップ分)赤ワイン 1/2カップ
砂糖 大さじ1
チリペッパー 少々
- 付け合わせ用
いんげん 5-6本
しめじ 1/4株ほど
作り方
- カンバーランドソースの準備
- 材料を全て小鍋に入れ、ベリーを潰しながらとろみがつくまで10分ほど中火で煮る
- 種が残らないよう、1を茶こしなどでこせばソースの出来上がり(とろみが足らなければ片栗粉を少しプラス)
- 付け合わせの準備
- いんげんは筋を取り除き、たっぷりのお湯で2分ほど茹で、氷水で冷やしてざるに上げておく
- しめじは小房に分け耐熱容器に入れて白ワインを少し振り、500W・40-50秒ほどでレンジ蒸しにしておく
- フィリングの準備
- ほうれん草は1分ほど茹でて水にさらして冷まし、水気を絞って細かく刻んでおく
- マッシュルーム・にんにくは叩いて細かくしておく
- 鍋でバターを温めてマッシュルームとにんにくを炒め、粗熱が取れたらパン粉・ほうれん草を加えてよく混ぜればフィリングの完成
- ローストロインの準備
- オーブンは120℃で予熱しておく
- 豚ブロックは中央から包丁を入れて観音開きにし、ラップをかけ瓶などで叩いて厚みを均一にしておく
- 肉の両面に塩こしょうをまんべんなく振り、フィリングを載せて巻き込む
- 3に豚の薄切り肉を被せ、タコ糸でしばって形を整える
- 肉をオーブンペーパーで包んでオーブンの上段にセットし、1時間ほど焼き上げる
- 焼き上がったら、オーブンペーパーに包んだ状態のまま30分程度休ませる
- 好みの厚さに切り分け、ソースをたっぷりかければ出来上がり。いんげんやしめじを添えて召し上がれ
ポイント
- レッドカラントが手に入りにくければ、ブラックベリーかブルーベリーのジャム大さじ1で代用することもできます(その場合砂糖は無しでOK)。
食後のヒトコト
マッシュルーム・ほうれん草・バターのうま味と香りをたっぷり吸い込んだフィリングに、ジューシーに仕上がったローストが絶妙にマッチ。
何より、お皿の上で赤く濃密に光るソースが艶かしい……。
ソースは色の美しさだけでなく、味も秀逸。フルーティーなベリーに赤ワインの渋みが加わって、全体を引き締めています。
つなぎになるような卵や小麦粉が入っていないのでフィリングがもろく、少し食べにくいのは気になりますが、素敵な味と見た目。さすがレクター博士のレシピです。
残酷描写を追求しながら、映像美の面でも飛び抜けている本作。
グロテスクだけれどとにかく幻想的で美しいため、「肉の出どころは分かりつつ美味しそうだと思ってしまう」という声が多いのにも頷けますね。
博士のように振る舞う……のはいろいろ問題がありますが、所作の美しさなどは見習いたいなあと思いつつ、今回もごちそうさまでした。