今回再現するのは、20世紀初頭のイギリス貴族や使用人たちの人間模様を描いたドラマ『ダウントン・アビー』のシリーズ中にたびたび登場するご飯料理「ケジャリー」。
当時の英国貴族に愛されたお料理を朝食やブランチに作れば、優雅な気分を味わえるかも?
グランサム伯爵家の朝食の代表格「ケジャリー」とは
アメリカ人の富豪ハロルドも虜になったご飯料理
今回再現する「ケジャリー」はダウントン・アビーのシリーズを通してたびたび登場する、ご飯を使ったお料理です。
シーズン1の1話冒頭、朝のキッチンの風景で映り込んでいるのをはじめとして、シーズン4の9話では料理長補佐のデイジーが作ったケジャリーを、「ハロルド様が3回もおかわりした」とのセリフも。
伯爵夫人コーラの弟でアメリカの大富豪であるハロルドが虜になったというのですから、よほど美味しかったのでしょうね。
ちなみに、ケジャリーは公式のクッキングレシピにも朝食メニューとして真っ先に登場。お屋敷での朝食の代表格として扱われていることが窺えます。
材料・調理法の考察
ケジャリーについてはインド発祥の、米とレンズ豆などから作られた「キチュリ(khichdi・khichri)」がはじまりとされる料理。
19世紀頃には英国料理として一般化していたものの、当初は残り物を有効活用するための節約料理、庶民の料理という位置付けだったようです。
ケジャリーが上流社会でもてはやされるようになったのは、20世紀に入ってからのこと。この頃になると肉や鮭を使ったものなど、さまざまなタイプのケジャリーが作られ、流行の料理として親しまれていた様子。
まさにダウントン・アビーの時代に、ケジャリーは貴族たちのお気に入りとして食卓に上がっていた訳ですね。
そんなケジャリーですから、グランサム伯爵家料理長・パットモア女史もおそらく料理長となる前の修行時代から、さまざまなバリエーションで作り続けてきたはず。
公式のクックブックではタラなどの白身魚と米にバターを絡め、卵と生クリームでまとめたタイプが紹介されていましたが、他のアレンジでも作っていたんじゃないかな?
パットモアさんについてはダウントン・アビーの物語がはじまる1912年時点で60歳くらいと思われるので、前の料理長から作り方を学んだとすれば、彼女が20歳頃の1870年以前のレシピを参考にするのが妥当でしょうか。
材料の分量を記した現在のレシピ本の形式を初めて取り入れたことで知られるエリザ・アクトンの著作。最初期のフードライターとしても有名です。
パットモアさん以前の料理長についてはどんな人物なのか全く分かりませんが、彼女(もしくは彼)が読み書きのできる人だったなら、当時評価の高かったエリザ・アクトンの料理本は目にしていてもおかしくなさそう。
劇中のシーンから読み書きができず、考え方も保守的なことが窺えるパットモアさんなので、前料理長から教えられたレシピはしっかりと守ってきただろうなという感じがします。
とはいえ、彼女それほど頑なな人でもない感じなので、味付けを変えるなどのアレンジはなんだかんだで試していそう(奥様やお嬢様方が喜びそうですし)。
ちょっと強引ですが、今回はエリザ・アクトンのレシピをベースにするので決まり。
白身魚は現地のケジャリーでよく使われる小ダラの燻製・スモークハドックの代わりに燻製塩で下ごしらえしたタラを使い、英国で長く親しまれるカレー粉を風味付けに加えて作ってみましょう。
参考:https://www.historytoday.com/archive/historians-cookbook/kedgeree
ケジャリーを作ってみよう
ダウントン・アビー|英国貴族の朝食ケジャリー
材料(4人分)
- 燻製風味タラ用
タラやカレイなどの切り身_200g
燻製塩_小さじ1/2
砂糖_小さじ1/2
- タラの下茹で用
牛乳_50ml程度
- ケジャリー用
冷ご飯_1.5合分(500g程度)
卵_1個
バター_30g
カレー粉_小さじ1
塩_ひとつまみ
カイエンペッパー_適量
こしょう_適量
- 飾り用
パセリ_1枝
ゆで卵_1個
作り方
- 燻製風味タラの準備
- タラはさっと洗って水気をキッチンペーパーなどで拭き取り、切り身の両面に砂糖と燻製塩をすり込む
- キッチンペーパーで1をくるんでからラップで包み、半日ほど冷蔵庫で漬けておく
- 耐熱皿などにタラを入れ、牛乳を注いで500Wのレンジで5分ほど加熱する
- 水気を切り、軽くほぐして骨も取っておく
- ケジャリーの準備
- ご飯は水で米粒をほぐすようにして洗い、ざるに上げ15分ほど置いて水気を切っておく
- パセリはみじん切り、卵は溶きほぐして卵液を作っておく
- フライパンでバターを温め、ご飯・タラ・カレー粉を加えて弱火で混ぜる(炒めないように)
- カレー粉が全体に行き渡ったら卵液を加えて全体をざっくりと混ぜ、卵が軽く固まったら火を止め、塩・こしょう・カイエンペッパーで味を整える
- パセリを散らし、輪切りにしたゆで卵を飾れば出来上がり。
ポイント
- 日本の米は一般に粘りが強いためご飯を水洗いしていますが、粘りの少ない長粒米なら水洗いの必要なしです。
- 炒飯のように炒めてパラパラに仕上げるタイプの料理ではないので、加熱の際はごく弱めの火加減で。余熱が入るため、卵が固まってきたら火を止めてOKです。
- タラの下ごしらえを省略したいなら、塩タラで代用するのもアリ。生タラだとあっさりしすぎるため、使うなら塩タラがおすすめです。
食後のヒトコト
バターの他に生クリームを加える公式クックブックのレシピほどではないものの、こちらもバターをたっぷり使っているので大変リッチな味わい。
淡白なタラにカレーの風味も強すぎず、優しくまろやか。程よくスパイシーで紅茶との相性も良く、朝食にぴったりですね。
しっとりと口当たりがいいので、ハロルド様じゃなくても3回くらいお代わりしてしまいそう……。
確実にカロリーは高いので食べ過ぎには要注意ですが、材料も特に変わったものはなく作りやすいのもポイント。休日のブランチなどに作れば英国貴族気分を味わえますよ。
そういえば『ダウントン・アビー』については、映画第二作目も公開されましたね。
新しい時代のクローリー家を描いた作品とのことで、 こちらも合わせて楽しみたいところです。