お椀に入った卵入り味噌雑炊

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大奥|上方風の白味噌卵雑炊

NHKによる新作ドラマ版の放送も控えた『大奥』から再現するのは、家重編に登場した卵雑炊。

上方風(京風)の雑炊は、昆布出汁と白味噌の上品な味わいが特徴的。胃が疲れたときなどにぴったりな、やわらかく優しい味のお雑炊です。

『大奥』家重編に登場する料理とは

大奥付きの料理人・芳三による昆布出汁の卵雑炊

ねぎを散らした卵雑炊のイメージ

今回再現するのは、よしながふみ先生による漫画『大奥』の家重編で幽閉中のお幸の方がはふはふとかき込んでいた、卵入りのお雑炊。

将軍家重の御台所(正室)・比宮が死去したのち、比宮のお付きであったお幸の方は京へは帰らず側室となって、一人娘の竹姫をもうけます。でも、その後に家重の心変わりがあり、彼女をめぐり新しく側室となったお千瀬の方を相手に刃傷沙汰を起こしてしまう……。

かくして牢に繋がれ食事をとらなくなったお幸の方が、はじめて口にしたのがこの卵雑炊。

江戸の一流料亭から大奥の御膳所(将軍のための厨房)の料理人となった、芳三こと善次郎がお幸の方のために京風を意識して作った卵雑炊ですね。

同じ卵雑炊でも、鰹出汁を使った江戸前のものには見向きもしなかったお幸の方でしたが、「情けなや…自ら命を絶つ事も敵わず、昆布出汁の雑炊ごときでかくもあさましき姿を人に晒すなどとは…」と、涙をこぼしながら雑炊に口に運びます。

ろくに食べていなかったのに加えて、故郷を思い出させる昆布出汁のお雑炊。さまざまなことを噛み締めつついただくそれは、よほど心と体に染みる味だったに違いありません。

材料・調理法の考察

皿の上のだし昆布

昆布出汁を使った卵雑炊というところまでは原作でも描かれているため、今回考えたいのは味付けについて。

原作でも上方と江戸前の食の違いについては触れられていますし、食材などの輸送手段も限られており、情報の伝達も遅かった時代ですから、地域ごとの味付けの差は今より顕著だったろうことは想像に難くありません。

こうした東西の違いについては、江戸後期に書かれた三都(京都・大阪・江戸)の文化や風俗について記された『守貞謾稿』が参考になりそうなので、まずはちょっと紐解いてみましょう。

今製雑炊は味噌汁を以って米に葱を交ゆ京阪ではねぶかぞうすい江戸にて「ねぎぞうすい」其三都とも種々菜蔬を交へ定り無レ之

引用:喜多川守貞『類聚近世風俗志 : 原名守貞漫稿 10版』https://dl.ndl.go.jp/pid/1444386/1/537

なになに……、味噌汁に米とねぎを混ぜたものを京都と大阪では「ねぶかぞうすい」、江戸では「ねぎぞうすい」と呼んで、三都どこでもさまざまな野菜を加えて作り、特別な決まりは無いと。

2種類の味噌と枡いっぱいの大豆

となれば、考えるべきは味噌の種類についてですね。

卵雑炊も卵料理だしということで、江戸後期に書かれた卵料理についての料理本『万宝料理秘密箱』(通称「卵百珍」)を併せてチェック。

『万宝料理秘密箱』だと、卵雑炊にはどうやら白味噌を使っている様子です。

関西は昔から白味噌文化の土地ですし、箸はつけなかったものの、白味噌に漬け込んだ鰆の味噌漬けに反応していたお幸の方ですから、白味噌の味付け自体はお好みのはず。上方の味に近づけようとするなら、味噌も白味噌を選ぶのが自然だなあ。

決まり。今回の卵雑炊は、昆布出汁に白味噌で味付けをして作りましょう。ささっと決まったので、早速スタートです。

参考:https://dl.ndl.go.jp/pid/1444386/1/537

http://kotenseki.nijl.ac.jp/biblio/200021712/viewer/71

白味噌卵雑炊を作ってみよう

大奥|上方風の白味噌卵雑炊

材料(2-3人分)

  • 昆布出汁用
  • 水_800ml

  • 昆布_8g

  • 卵雑炊用
  • ごはん_300g(茶碗約2杯分)

  • 卵_2個

  • 白味噌もしくは西京白味噌_大さじ4

  • 小ねぎ_2本程度

作り方

  • 昆布出汁の準備
  • 鍋に水を注ぎ、昆布を入れて30分ほど浸しておく
  • 弱火で加熱し、沸騰直前で昆布を取り出せば昆布出汁の完成
  • 卵雑炊の準備
  • 卵は割りほぐし、小ねぎは小口切りにしておく
  • 鍋のだし汁を中火にかけ、沸騰したらごはんを加えて10分ほど煮る
  • 一旦火を止めて味噌を溶き入れ、再度弱火にかけ2-3分ほど煮る
  • 卵を流し入れてひと混ぜし、蓋をして1分ほど蒸らせば出来上がり。食べる前に小ねぎを散らして召し上がれ

ポイント

  • 一般的な味噌を使う場合、味噌の量は1/2〜1/3の量に減らして加えるのがおすすめです。

食後のヒトコト

上品な風味の昆布出汁に甘い白味噌で味をつけた卵雑炊は、まろやかな卵の味わいも相まってまるでクリーミーなポタージュのよう。

強い味の食べ物を受け付けない体の弱った人でも、この優しい味付けのお雑炊ならたしかに口にできそうです。

お幸の方は喜びのあまりかき込んでしまうほどでしたが、大変やわらかく優しい味ですから、人によっては物足りなく感じるかも。

味が引き締まるので、いただく際にはほんのちょっぴりお醤油を垂らしても良さそうですね。

ちなみに、今回はごく一般的な煮出しの方法で出汁を引いていますが、昆布出汁なら以下の記事でご紹介している方法もおすすめ。

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昆布のうま味成分を最も多く・効率的に抽出できるため、芳三が現代の人ならきっと試していたはず。

美味しい出汁が簡単に取れるので、試す価値アリですよ。

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  • この記事を書いた人

宵闇

作者の心情や時代背景などを頭でっかちに考察しつつ、物語や歴史に登場する料理を作っています。お仕事のご依頼等については、お問い合わせフォームもしくはinfo@saigengohan.comよりどうぞ。

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