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リッパー・ストリート|19世紀末英国のローストポーク

本日8/31はヴィクトリア朝時代のイギリスにおけるシリアルキラー「切り裂きジャック」による最初の犯行があったとされる日。

あまりにも有名な事件ですから、事件の詳細は知らなくても名前は聞いたことがある方が大半だと思います。

さまざまな犯人像が推理され、現在もその謎が追われている歴史的な出来事。今回は、その時代を舞台にしたBBCのドラマからヒントを得た一皿です。

『リッパー・ストリート』ってどんなドラマ?

あらすじ

本作は1話完結のフィクションでありながら、切り裂きジャック事件を追った実在の刑事がモデルとなったフレッド・アバーライン、エドムンド・リードらをストーリーに登場させている。第1話では、ジャックのコピーキャットを思わせる事件が発生、また最終話では切り裂きジャック事件を取り上げ、新たな展開が繰り広げられるなど、世界中で知らない人はいない未解決事件”切り裂きジャック”のエッセンスを巧みに織り交ぜながら、巧妙に練られたストーリーラインが魅力のテレビシリーズ。登場人物それぞれが秘密を抱えており、各キャラクターのサイドストーリーも魅力の一つとなっている。

引用:https://www.amazon.co.jp/dp/B07X7SBB29/

『リッパー・ストリート』は、切り裂きジャック事件から半年後のホワイトチャペル地区を舞台にした刑事ドラマ。

直接切り裂きジャックを追うというものではありませんが、急速な近代化により犯罪が多様化・凶悪化したロンドンで事件を追う刑事たちの物語はとてもスリリング。

法的にも倫理的にも現在ではあり得ないことがまかり通っていた時代のお話ですから、起きる事件もなかなか苛烈です。

グロめのシーンもそれなりにあるので苦手な人は要注意ですが、同事件の担当だったフレデリック・アバーライン警部やエドムンド・リード警部補など、実在の人物もしっかり登場。

当時の文化や風俗なども丁寧に描写されているため、スリラー・サスペンス好きはもちろん、歴史好きにもおすすめのドラマとなっています。

チーズやハム、ブドウなどを盛り合わせたプラウマンズ・ランチ

ところで、劇中には今も営業を続けている実在のパブ、「The Brown Bear」がしばしば登場します。

そのため今回はパブにちなんだメニューにしたかったんですが、この時代のパブではあまり食事などは提供されていなかったらしく、あっても簡単な「プラウマンズ・ランチ」程度のものだったよう。

ドラマの中でもパブでビールやウイスキー、またお茶を飲むシーンは登場するものの、主役の刑事たちが食事をするシーンがまあ出てこない出てこない……。

当時のパブ文化を忠実に描写しているのは素敵なことなんですが、料理ネタを待ち構えてる私としてはその点ちょっと残念だなあと。

なので今回はちょっと視点を変え、ヴィクトリア朝時代に家庭で作られていた料理に目を向けてみることにします。

※チーズやハム、サラダ・果物などの冷菜を一皿に盛り付けた食事プレートのこと

ドラマの舞台・ヴィクトリア朝時代の家庭料理とは

ヴィクトリア朝時代のベストセラー料理本『ビートン夫人の家政読本』

本作の舞台であるヴィクトリア朝時代を代表するレシピ本といえば、まず思い浮かぶのは『Mrs Beeton's Book of Household Management(ビートン夫人の家政読本)』でしょうか。

初版は1861年ですが、当時の大ベストセラーである本書は盛んに版を重ねており、ドラマの舞台とほぼ同時期の1890年版も有名なのでちょうどいいですね。

元々の『ビートン夫人の家政読本』については効果的な掃除・洗濯の仕方や使用人の管理方法、また社交の場でのエチケットなども含めた当時の中〜上流層のご婦人方に向けた家庭生活全般の手引書といったところ。

料理だけを扱っていたわけではないのですが、900以上ものレシピが掲載されているため料理本として理解されていることも多いようです。

ヴィクトリア朝時代を感じさせるキッチンのイメージ

ドラマに登場するリード警部補も中流階級で妻帯者ですから、自宅でたまにはこうした料理を味わっていたかも(劇中でたびたび自宅に帰れず警察署に何日も泊まり込んでいる描写があるので、本当にたまにかもしれませんが……。)。

事件で飛び回る多忙な彼をねぎらう一皿なら、やっぱりパワーの源になる肉料理。ビタミンはじめ栄養たっぷりの豚肉なんかいいかもしれません。

ではでは、ビートン夫人のレシピから豚肉を使ったお料理を探してみましょう。

ビートン夫人スタイルのローストポーク

白い皿の上のトースト

豚肉に関する項目を読むといくつかの料理が見つかりますが、ビートン夫人レシピはたまに変てこ料理がある(よく焼いたトーストをお湯に浸し、それを濾して飲むトースト・アンド・ウォーターとか)ので慎重に探します。

豚の項目については現代の私たちの常識で理解できる料理ばかりで一安心。

中でも、セージを効かせた玉ねぎのスタッフィングとアップルソースを添えて食べる「ROAST LOIN OF PORK(豚ロース肉のロースト)」は良さそう。いかにも英国料理といった感じです。

ビートン夫人スタイルのローストポークを作ってみよう

19世紀を代表するモリスの壁紙デザイン。
工業化により、庶民でも華やかな柄物を
手に入れやすくなったのはこの時代からです。
金縁の皿に盛り付けられたローストポークとスタッフィング、アップルソース
美味しいのですが、彩りという概念は無い仕上がり。
古典的な英国料理という感じがして嫌いじゃありませんが。

レシピでは肉汁と小麦粉・ブイヨンで作ったグレイビーソースを添えるようなので、こちらも作りましょう。

材料や分量についてはあらかた本に記載されているため、そこから作りやすい方法を検討。以下のような形になりました。

ちなみに本来のレシピだと豚肉はロースなのですが、今回はもも肉で。

どちらでも美味しく作れますが量が少ないと乾燥しやすいため、肉は500g程度用意するのがおすすめです。

リッパー・ストリート|19世紀末英国のローストポーク

材料

  • ローストポーク
  • 豚ももブロック 500g

  • 塩 小さじ1

  • こしょう 適量

  • グレイビーソース
  • 小麦粉 大さじ2

  • コンソメキューブ 1/2個

  • 水 150ml

  • 白ワイン 50ml

  • ウスターソース 小さじ1

  • アップルソース
  • りんご 1個(生食に向いた品種でOK)

  • レモンジュース 小さじ1

  • ラム酒 数滴

  • セージ風味の玉ねぎフィリング
  • 玉ねぎ 中2個

  • ドライセージ 小さじ1/2

  • パン粉 50g

  • 卵 1個

  • バター 20g

  • 塩 ひとつまみ

作り方

  • アップルソース
  • りんごは皮を剥き芯を取っていちょう切りにし、耐熱容器に入れレモンジュースで和えておく
  • 600Wのレンジで5分ほど熱し、一度取り出して混ぜさらに5分加熱する
  • 果肉を潰し(食感を残したいなら軽く・ピュレ状にするならしっかりと)、香りづけにラムを落として出来上がり
  • セージ風味の玉ねぎフィリングの準備
  • 角切りの玉ねぎにセージ・ひとつまみの塩をまぶして大きめのグラタン皿などに入れ、600Wのレンジで4分ほど加熱する
  • 玉ねぎが熱いうちにバターを混ぜ、粗熱が取れたらパン粉・卵も加えてよく混ぜておく
  • ローストポークの準備
  • 豚肉はフォークでまんべんなく刺して塩こしょうをまぶしつけ、1時間ほど置いて常温に戻しておく
  • オーブンは120℃で予熱しておく
  • フライパンを熱して油を引き、肉の表面に焼き色を付ける(フライパンは後でグレイビーを調理するため、洗わずそのままで)
  • 肉はオーブンペーパーで包んでオーブンの上段にセットし、フィリングも一緒に1時間ほど焼き上げる
  • オーブンペーパー内の肉汁を別容器に移し、焼き上げた豚肉は包んだ状態のまま30分程度休ませておく
  • 3で使ったフライパンに肉汁とコンソメキューブを入れ、弱火で温め溶かす
  • 茶こしで小麦粉をふるいながら加え、黄色っぽく色づいてくるまで攪拌しながら加熱する
  • ダマにならないよう水とワインを少しずつ入れ、全体をしっかりと混ぜながらさらに火を入れる
  • 最後にウスターソースを入れ、必要なら塩こしょうで味を整えグレイビーソースの完成
  • フィリングはサーブする前にラップをして2分ほど温め、厚めに切り分けたローストポークにグレイビーをかけ、アップルソースも盛り付けて出来上がり

ポイント

  • 玉ねぎフィリングは食べる前に軽くレンジで温めるとしっとり感が復活。グレイビーをたっぷりかけてどうぞ。

食後のヒトコト

しっとり仕上がったローストポークと付け合わせ

ローストポークはしっとりと柔らかな仕上がり。爽やかなアップルソースとの相性も抜群です。

グレイビーソースをかけて食べる玉ねぎフィリングはマッシュポテト感覚ですね。焼き上げたままだと多少ぱさつくので、食べる前に軽くレンジで温めるといいと思います。

それにしても当時は細かく温度調整ができるオーブンも温め直すレンジも無かったわけですから、作るのも美味しくいただくのも今より難しかったろうなあと。

急速な工業化による公害の発生で衛生状況も悪かったようですし、ドラマで描かれているように治安は激悪だったので、普通に日常生活を送るのも一苦労だったでしょう。

生きにくい世の中をたくましく駆け抜けたヴィクトリア朝時代の人々に思いを馳せながら、今回もごちそうさまでした。

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  • この記事を書いた人

宵闇

作者の心情や時代背景などを頭でっかちに考察しつつ、物語や歴史に登場する料理を作っています。お仕事のご依頼等については、お問い合わせフォームもしくはinfo@saigengohan.comよりどうぞ。

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